安倍政権が通常国会に提出した2014年度予算案は過去最大の95兆8823億円となった。その中身を検証すると族議員が跋扈する「バラ撒き自民党」への回帰が明らかになる。
昨年12月24日に2014年度予算の政府案が閣議決定されると、ゼネコンの業界団体「日本建設業連合会」は即日、会長名でコメントを発表。〈公共事業予算確保にご尽力をいただいた国土交通省をはじめとする政府及び与党の関係各位に感謝の意を表したい〉と予算案を“高く評価”した。
それもそのはずだ。公共事業費は対前年度比12.9%増の5兆9685億円。道路整備のための特別会計が一般会計に繰り入れられた分を除くと1.9%増だが、2013年度補正予算案で既に約3兆円の公共事業費が計上されており、合計すれば約9兆円の規模となる。民主党政権下で4兆円台に削られた公共事業費が、第一次安倍政権(2007年度、約6兆9000億円)を軽く超える水準に“急成長”したわけだ。
これが安倍首相の5年間の“勉強の成果”なのか。しかも「1メートルあたり1億円」の高い建設コストで知られる東京外環道など、首都圏の環状道路整備に対前年度比10%増の1681億円が計上され、業者が喜ぶのも無理はない。
特に二階俊博・党国土強靱化総合調査会長が旗振り役となる国土強靱化関連予算(防災、減災、老朽化対策)は2兆8439億円と対前年度比15%の大幅増。
そのなかで4121億円が計上された「代替性確保ネットワーク整備等の防災・震災対策」は災害発生時に既存の道路の代わりとなる高規格幹線道路を整備する事業だが、露骨なことに大幅増の予算案が発表された翌日、二階氏の地元・和歌山県は県内を通る近畿自動車道紀勢線に予算が配分されるよう〈国に対して強く働きかけていく〉とする資料を発表。地元への利益誘導実現に向けた見事な連係プレーを見せた。
昨年度予算は2012年の総選挙直後に編成されたため、族議員が予算確保に動く時間はほとんどなかった。今回が「事実上、政権復帰後初の本予算」(自民党ベテラン議員)になり、族議員と業界団体、予算を拡大させたい役所の「鉄のトライアングル」の復活が各所で見られた。
整備新幹線建設予算には2%増の720億円が計上され9年ぶりの増額。予算案の閣議決定直前には与党の整備新幹線建設推進プロジェクトチーム座長の町村信孝・元官房長官が官邸を訪問。菅義偉・官房長官に予算増額を直談判した結果、町村氏の地元を通る北海道新幹線(新函館─札幌間)に配分される予算は120億円に倍増されたのだから笑いが止まらないだろう。
※SAPIO2014年3月号