御用メディアと化した新聞・テレビは、株価や政府が都合良くまとめた経済指標を垂れ流し、虚構の好景気を煽ってきた。「権力のチェック機関」という役割をかなぐり捨てた大マスコミの無節操な報道を検証する。
「来年もアベノミクスは買いだ!」
東京証券取引所の大納会に出席した安倍晋三首相が自らの経済政策による株高をアピールした翌日、新聞・テレビは首相の景気のいい言葉を大々的に報じた。しかし、その後の株式売買状況を見ると、年末まで買い越していた外国人投資家が年明け1週目に突如として1452億円も売り越して早くも暗雲が垂れこめている。
マスコミ報道で煽られた日本の個人投資家は、金額ベースで東証取引量の7割を占める外国人投資家にまんまと高掴みさせられたわけだ。
政権の“大本営発表”を垂れ流して「好景気」を煽る大手マスコミの報道は目に余るものがある。昨年大晦日の見出しを見てみよう。
「今年、歴史的値動き 株高41年ぶり 円安34年ぶり 黒田緩和が後押し」(日経新聞2013年12月31日付1面)
「株 記録ずくめの年 『アベノミクスで円安』追い風」(読売新聞同日付総合面)
日経は同じ日の総合・経済面で「株高・円安 恩恵広がる 家計、高額品の消費増 企業、投資に前向き」の見出しで〈株高・円安は長くデフレで低迷してきた日本経済の『風景』を変え始めた〉とアベノミクスを持ち上げたが、記事をよく読めばその恩恵に浴することができるのは〈株高による資産効果〉を得られた富裕層に限られることがわかる。見出しに掲げた「恩恵広がる」「家計、高額品の消費増」は明らかに大げさだ。
典型的なのが1月16日に厚生労働省が発表した2013年賃金構造基本統計調査の都道府県別速報に関する報道である。翌日の日経は「所定内給与が19道府県で増 昨年」と2013年に給料が増加した地域の数を見出しに掲げた。ところが記事は〈減ったのは東京、三重、兵庫など28都府県で、2012年調査の25都道府県を上回った〉と結ばれている。実際は給料が減った地域のほうが多かったのである。