日本テレビは、今年の巨人戦中継について、地上波でナイター6試合、デーゲーム14試合を中継すると発表した。全国中継は、ナイター6試合とデーゲーム2試合のわずか8試合に激減。ちなみに昨年は、デーゲーム中継は16試合が全国ネットだった。激減の背景についてテレビ局関係者はこう話す。
「九州はソフトバンク、札幌は日本ハムと、かつて巨人ファンが大勢を占めた地域が、今はパ・リーグの球団の本拠地となっている。日テレが『各地方の球団の試合放送がかなり爆発力を持っており、配慮した』とコメントしていたように、それらの地域では視聴率20%を越える試合もありますからね。とはいえ、やはり地上波中継での露出を増やさない限り、新規のファンは取り込めないことは明白です」
10年ほど前まで、巨人戦ナイター中継が連日全国ネットで放送されていたことを考えると、時代の流れを痛感させられるだろう。他局が数試合を全国ネットで放映したとしても、10年前の1割ほどにしか満たない。テレビ局関係者が続ける。
「ある意味、巨人が全国区をあきらめ、関東ローカルの球団になることの始まりともいえる。その判断を、長年巨人に支えられてきた日本テレビが下すとは、なんとも皮肉な流れです。日本テレビ内では、巨人戦は『数字の取れない上に、金だけかかる』と評判が良くありません。今、日テレのゴールデン帯の番組は、視聴率がほぼ2ケタに乗っていますからね。もちろん1ケタの番組もありますが、19時と20時台が両方とも1ケタになることはまずない。
それを潰して、あえて巨人戦を放送するメリットはありません。ナイター中継は1ケタになることも珍しくないわけですから。かといって、クライマックスシリーズや日本シリーズの中継権争いなどもあるので、すべてを辞めるわけにもいかないのです」
とはいえ、巨人戦の全国中継が8試合しかないとなると、全国の巨人ファンへの影響は小さくない。特に、北陸などプロ野球球団のない地域はいまだに巨人ファンが多く、そうした既存のファンが離れていく懸念すらある。あるスポーツライターは、こう危惧する。
「巨人が関東ローカルの球団になってしまうことが、プロ野球界全体にとって、良いことなのかどうか。Jリーグは開幕当初、スタープレーヤーを抱えたヴェルディ川崎が全国区の人気を博したことで、日本中が盛り上がった側面がある。
だが、今ではクラブのある各地域では盛り上がっているが、日本中でJリーグが爆発的な人気があるとは言い難い。実際、地上波で中継しても、1ケタ台前半の視聴率しか取れていない。
プロ野球は、巨人が良くも悪くも全国区の人気を保つことで、隆盛を誇ってきた側面は否めない。今回の日テレの巨人戦の関東ローカル中継移行の決断は、野球界にとってターニングポイントになると思います」