在日米軍・普天間基地の辺野古移設のための工事着工が秒読みに入り、左翼活動家や過激派が続々と沖縄入りしている。安倍官邸が恐れるのは「移設反対派と機動隊の流血激突」だ。防衛庁調査一課長や中国管区警察局長を歴任した元警察官僚(元警視監)で、危機管理の専門家として知られる大貫啓行・麗澤大学教授がこう指摘する。
「沖縄の基地問題は国内の治安悪化の発火点になる危険性が高い。過激派などのプロ活動家は、まず沖縄の世論感情に訴える戦術をとるはずだ。米兵のレイプ事件や政府による埋め立て事業の強行などを批判して県民感情に訴え、一般市民をデモに駆り立てる戦術を取ることが考えられる。
場合によっては一般市民の死傷者が出かねないくらいの過激な衝突に走るだろう。1960年安保闘争での樺美智子さんのような悲しい事件が起きれば国民の批判は政府に向けられる。
もちろん、治安当局はそんなことは心得て対応を考えているはずだが、今年は4月のオバマ大統領、秋にはプーチン大統領の来日が予定されており、どうしてもその警備に力を削がれるという事情がある。その結果、基地反対デモなどで一般市民の負傷者が出るようなことになると、基地反対闘争が長期化して深刻な治安問題になり、アメリカとの関係を一層こじらせる懸念は大いにあります」
大貫氏のいうように、沖縄安保闘争が激化するであろう4月下旬にはオバマ大統領の来日が予定されている。そのさなかに米軍基地をめぐって官邸が恐れているような流血の惨事が発生すれば、安倍首相は首脳会談で「日米安保体制の強化」を演出するどころではなくなる。
※週刊ポスト2014年2月28日号