「無神経」「不謹慎」「悪趣味」。いくら言葉を尽くしてもこの光景には怒りを禁じ得ない。日本では3. 11から3年が経とうとしているが、韓国の首都・ソウルに、いま異様な建物がそびえ立っているのをご存じだろうか。
地元住民が「ツナミ」の愛称で呼ぶこの建物は、ソウル広場のそばに2012年に完成した新市庁舎。特殊ガラスで覆われた“津波”のアーチが襲う先にあるのは、1926年、日本の統治下時代に建てられた旧市庁舎(現・ソウル図書館)だ。
「まるで植民地時代の痕跡を津波が飲み込もうとする瞬間を捉えたかのよう」といわれるこのデザイン。現地の建築専門家の中からは「戦後最悪の建築物」との評価も聞かれるが、設計者のユ・ゴル氏は「津波のように見えるところこそ醍醐味。(津波に見えるという)批判は、新庁舎がダイナミックであり力強くソウル広場にはみ出していくように見える証拠。そういう意味では、称賛として受け止められる」と話す。
デザインが決まったのは3.11以前とはいえ、日本の被災者感情を考慮すれば、計画変更があって然るべき。だが、この国は意に介さず。そのまま造ってしまうのは 「反日」だからということか。
新市庁舎の建築費は3000億ウォン(当時で約210億円)。一方、旧市庁舎(写真左)は撤去の声もあがったが、「痛ましい歴史を残す必要がある」と保存が決定。しかし、何もこんな形で残さなくとも
※週刊ポスト2014年2月28日号