昨年夏に発売された『長生きしたけりゃふくらはぎをもみなさい』(アスコム刊)が65万部のベストセラーになり、健康雑誌でもたびたび特集が組まれるほど注目されている。
しかし、肩や腰など、こりが溜まって“揉み甲斐”のありそうな部位はたくさんあるのに、なぜ、ふくらはぎなのか。同書の著者で鍼灸師の槙孝子氏が解説する。
「人間の血液は重力の影響で、下半身に集まります。上からどんどん降りてくるその血液はふくらはぎの辺りから足首にかけて溜まりがちです。ふくらはぎの血流が滞ると血液が足によどみ、心臓病などさまざまな病気の原因にもなります。ふくらはぎをよく揉みほぐすことで足先からの血液が心臓へと戻りやすくなり、病気の症状が改善へと向かいます。ふくらはぎが“第2の心臓”と呼ばれるゆえんです」
例えば、飛行機や車の狭い座席に長時間座り続けることで起こるエコノミー症候群は、血流が滞ってひざの裏などの静脈に血栓ができ、立ち上がった時にその血栓が肺に及んで血管を詰まらせるのが原因。ふくらはぎを刺激して血流をよくすれば防げるため、各航空会社では長時間のフライトでは膝から下のストレッチをすすめているが、揉めばなおさら効果的だ。
「ふくらはぎマッサージで血流がスムーズになれば、心臓や腎臓への負担が軽くなり、血圧が安定します。また、酸素や栄養が全身に行き渡るようになり、同時に脂肪や老廃物が排出されやすくなります。その結果、免疫力が上がって自然治癒力が高まり、がんなどの病気予防や花粉症などのアレルギー症状の改善、さらには糖尿病や冷え性、不眠、足や腰の痛みなど、さまざまな不調を改善することができるのです」(槙氏)
ふくらはぎを揉むポイントは次の通り。
●血液を心臓に戻すイメージで、アキレス腱からひざ裏に向かって揉む。
●腹式呼吸で、ゆっくり指で押しながら息を吐き、指の力を抜きながら息を吸う。
●強さは「ちょっと痛いけど気持ちいい」程度。ふくらはぎの硬い人は「さするだけ」から始める。
●痛い、つらいと思ったら無理せずにやめる。
「ふくらはぎの内側は冷え性や更年期障害、中央は不眠や腰痛、外側は耳鳴りや肩こりなどに効き目があります。お風呂の後など、ふくらはぎが温まっている時にやるとより効果的です。このマッサージをすると汗や尿が出やすくなるので、前後に水やぬるま湯を飲み、水分補給することをおすすめします」(槙氏)
※週刊ポスト2014年2月28日号