インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる呼吸器感染症で、発熱や頭痛、関節・筋肉痛、全身の怠感などの症状が突然現われる。インフルエンザウイルスは変異しやすいために、毎年流行を予測してワクチンを作っている。この冬は昨年12月中旬から発症が始まって全国的な流行となり、1月末の時点で患者数は1週間で130万人を超えた。
現在、流行中のインフルエンザウイルスは、A香港型が約50%だが、A/H1N1型も30%強と前のシーズンに比べて急増している。
このA/H1N1型ウイルスの約13%に、抗インフルエンザ薬タミフルに耐性を持つものが見つかっている(1月27日現在)。最初が北海道でその後、山形、神奈川、大阪、三重で発見されている。三重県の患者は、北海道滞在中に感染し、戻って発症したものだ。
国立感染症研究所感染症疫学センター第二室の砂川富正室長に話を聞いた。
「抗インフルエンザ薬を飲むと、患者の体内でウイルスが一部変異することがあります。しかし今回の場合は、北海道の患者が一人も治療薬を飲んでおらず、体内での変異は考えられません。三重県の患者は北海道滞在中に、耐性ウイルスに感染した可能性があります」
タミフル耐性ウイルスの大流行としては、2007年11月頃から北欧を中心に始まったAソ連型インフルエンザがある。このウイルスは、約1年間で日本を含む世界中に広がり、当時98%がタミフル耐性となった。このAソ連型もA/H1N1だが、2009年に日本で約2000万人が感染と推計される新型インフルエンザと今回のウイルスとは異なる。
A香港型ウイルスの特徴としては、感染すると喉の粘膜付近で増殖し、他の細胞に感染が広がる。高齢者などでは治りかけの時に、肺炎球菌などに感染し、2次性の肺炎を起こすことがある。A/H1N1型ウイルスは、肺の奥の方の細胞に感染することがあり、若い人でもウイルス性肺炎を起こす危険性がある。気管支ぜんそくや腎臓病、循環器疾病など慢性的な持病を持っている人は特に注意が必要だ。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2014年2月28日号