香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」によると、中国人民解放軍では兵士の70%が一人っ子で、戦闘部隊に限ると、80%以上にも達するという。一人っ子は「小皇帝」といわれるほど、祖父母や父母、親戚などから甘やかされて育つため、忍耐力などの精神力や体力の低下も懸念されている。専門家からは「一人っ子部隊」の戦闘力に疑問が投げかけられており、軍内でも一人っ子のメンタルケアなどの対策を講じ始めた。
軍機関紙「解放軍報」は遼寧省大連市生まれの一人っ子で、2010年9月に大学卒業後、入隊した孫友朋さんに取材して、「私は一人っ子で、甘やかされていた。苦しい訓練が終わった夜、布団のなかで家族や彼女を思い、泣き明かした」との話を引き出している。同紙は新兵が仮病などで訓練をサボることはよくあると報じている。
また、韓国の英字紙「コリア・ヘラルド」は沖縄県尖閣諸島をめぐって、日中両軍が戦った場合、甘やかされた「小皇帝」「小皇后」が多い中国軍が不利なのではないかとの疑問を呈している。
中国国防大学の劉明福教授は広東省発行の「南風週刊」に寄稿し、「一人っ子を戦場に行かせることを嫌う中国の古くからの風習に注意を払う必要がある。軍兵士のなかで、一人っ子が占める割合が高くなればなるほど、軍の発展に戦略的懸念を抱かせることになる。このため、身体的能力など軍の基準に合う兵士が不足している問題はすでに10年以上続いている」と指摘しており、兵士の質が低下していることを明かしている。
マカオの軍事専門家・黄東氏も「中国軍の幹部や軍事専門家は1990年代から、一人っ子政策が中国の安全保障に与える影響を懸念している」と指摘。このため、軍当局は自己中心的な一人っ子の性格的な弱さを克服するためのメンタルケア中心の「特別訓練プログラム」を立案しており、近く導入する予定だという。
中国共産党指導部は昨年11月の党中央委員会総会で、夫と妻が二人とも一人っ子の場合、一人っ子政策を適用せず、第二子まで生むことができるなどの緩和政策を適用することを決定しているが、これは実は尖閣など領土問題を睨んでの習近平指導部の対日政策の一環との見方もできそうだ。