最近のCMはドラマや映画並みにグッとくるものが多いと感じませんか? 泣けるCMが増えたのはなぜなのか。テレビ評論家の木村隆志さんはこう分析する。
「最近では、泣ける噺をする落語家ならぬ『泣語家』や、泣ける映画、ドラマを紹介する『涙ソムリエ』の登場など、意図的に涙を流し心を浄化させる“涙活”が注目されています。その流れから、CMにも泣けるものが増えてきたのでしょう」(以下「」内は木村さん)
そこには消費者の変化が見てとれるという。
「商品自体は似たり寄ったりで差別化が難しく、消費者は企業イメージで商品を選ぶ時代になっています。その点、泣けるCMは他社との差別化を図りやすく、企業のイメージアップにもつながりやすいというメリットがあります」
最近の傾向としては、家族の絆や努力の大切さを訴えるものが増えている。そこには、CMならではの理由も。
「CMには、いつ見られるかわからない希少さと、繰り返し見ることで心の響き方に変化が生じるという特徴があります。だから見ている人の心にいつまでも残るんです。昔のように15秒ではなく、90秒のCMも増え、よりドラマ性があるものを作れるようになったことも感動を呼ぶ要因です」
お互いを思いやる夫婦の絆にジーンとくるのが、大和ハウスのCM。
新聞記者の夫・リリー・フランキー(50才)と、在宅で翻訳の仕事をする妻・深津絵里(41才)の、一見淡々とした口調ながら相手への思いやりが垣間見える掛け合いに和まされるCM。2011年1月からオンエアされているシリーズは、すでに3話目に突入している。
「“家”と“家に住むということ”においての理想の形を表現したいと考え、制作しました。そこで、家を買う中心世代の30~40代向けとして、役柄のイメージに合ったリリーさんと深津さんに出演していただきました」(総合宣伝部・堀内彩加さん)
今回の「初雪篇」は、海外出張の妻と、ひとり家に残った夫が一定期間離れて過ごすという設定。
「お互いの不在によって、その存在の重要さに改めて気づくふたりの心の機微などを丁寧に表現できたと思います。1話目から夫婦役を演じてきたふたりの息はピッタリで、現場のスタッフたちが微笑ましく感じたくらい。そんな現場の温かさが、CMにも出ているのではないかと思います」(堀内さん)
ちなみに、CM中でリリー・フランキーが歌う『背骨』は、オリジナル曲。「何気ないあなたの言葉が、私の背骨に突き刺さる」という歌詞は、世の夫の気持ちを代弁しているかのよう。
後ろから抱きしめる母のやさしさにホロリとさせられるのが、東京ガスのCM。
「このシリーズには、『“料理”は家族の絆であってほしい。そして東京ガスはそのお手伝いをしたい』という思いを込めています。地上波では基本的に週に1度のみの放映です。一度見ただけでも忘れずに心に残るものにしようと、6作目は、就活に励む娘と母親の話にしました」(広報部・桑名朝子さん)
※女性セブン2014年3月6日号