なんとも朝日新聞らしい記事である。
2月11日の建国記念日に掲載された「売れるから『嫌中憎韓』」という特集記事は、〈「嫌中憎韓」が出版界のトレンドになりつつある。ベストセラーリストには韓国や中国を非難する作品が並び、週刊誌も両国を揶揄する見出しが目立つ〉と始まる。
週刊誌には、もちろん本誌も含まれる。ご丁寧にも本誌が昨年発行した44号のうち、38号の見出しに、「中国」「韓国」「尖閣」「慰安婦」などの言葉があることを調べ上げ、〈ほとんどの記事が両国や、両国の指導者を非難する内容だ〉という。
その背景には「売れるから」「国民不満すくう」「訴訟リスク低い」といった事情があるのだとか。
つまり、この記事で朝日がいわんとするのは、こういうことだろう。「嫌中憎韓」を煽る週刊誌や出版社は、売れるからという安直な理由で、むやみに中国や韓国に対する国民の悪感情を煽っている──と。
記事では、ご丁寧にも「『嫌中』『憎韓』に酔いしれる人々は本当に武器を取るつもりか」と訴えた週刊現代について、「面白いだけでなく、ためになる週刊誌でなければならない」(同誌記者)とのコメントを紹介し、本誌などの「嫌中憎韓」メディアと対比している。
しかし、そもそも中国や韓国について的確に批判することは、読者にとって「ためになる」ものではないのか。今回の朝日記事に疑問を抱いたという保守系の月刊誌『Voice』の前田守人編集長はいう。
「たしかに、私たちの雑誌もここ4か月ほど、中国、韓国の特集が続いていますが、それは日本をめぐる国際政治上の大問題だからです。韓国では国策として反日がすすめられています。フランスの漫画祭(※注1)や、米バージニア州での日本海の呼称問題に関する条例(※注2)などです。
韓国は、あきらかに中国とアメリカという世界の二大覇権国家との間で等距離外交をし、そうすることで日本を孤立化させようとしている。そうした中で日本が韓国や中国の顔色をうかがうような外交政策をとっているようでは、今後、国の存亡がかかってくる。
だからこそ、中国・韓国特集は読者の関心が高いんです。朝日は『売れるから』と書きますが、雑誌は売れなければ次が出ない。そこを問題にする朝日の感覚のほうが問題です」
この点に関しては本誌も全く同感である。中国・韓国が連日のように、日本に対する批判や国際的な宣伝工作を進め、アメリカをはじめ世界各国でそれに呼応した動きが出てきている。それに敏感に反応するのはジャーナリズムとして当然のことではないか。
【※注1】今年1月に行なわれたフランスのアングレーム国際漫画祭で、韓国政府が従軍慰安婦をテーマにした漫画やアニメを展示した。
【※注2】今年2月、米バージニア州の下院で、日本海の呼称を韓国が求める「東海」と併記する法案が可決された。
※週刊ポスト2014年3月7日号