牛丼業界に衝撃が走った。2月12日、業界4位の『なか卯』が、主力商品「和風牛丼」の販売を中止し、新たに「牛すき丼」を導入すると発表したのだ。
『なか卯』が牛丼の販売を開始したのは1974年。歴史は業界1位の『すき家』よりも古く、これまで『なか卯』の丼メニュー販売の3割を占めていた主力商品だった。
そんな“目玉”を捨ててまで、今回、「牛すき丼」の導入に踏み切ったのだ。いったい何が起きているのか──。まずは、試食してみるしかない。
名前の通り、すき焼き風の具材がご飯の上一面に敷き詰められている。メインは、従来の「和風牛丼」で使われていたものよりも厚めに切られた牛肉。やや脂身が多いが、これは豪州産牛肉から、脂身の多い米国産牛肉に変わったためだという。
この肉に加え、焼き豆腐、白ネギ、白滝、エリンギといった具材が、やや甘めの濃いタレですき焼き風に煮込まれている。具材には味がよく染み込んでいて、食が進む。アクセントに三つ葉がトッピングされているあたりが、丼物を得意としてきた『なか卯』らしい。
値段は350円(並)。これまで290円だった「和風牛丼」よりも高くなった。しかし、現在は「和風牛丼」を超える売れ行きを見せているという。
「これまで『親子丼』(490円)や『カツ丼』(590円)を食べていた常連客からの注文が多いですね。丼物としての割安感があるのではないでしょうか」(都内の『なか卯』店員)
なぜ“脱・牛丼”を図ったのだろうか。『なか卯』・『すき家』を展開する、「ゼンショーホールディングス(HD)」広報室の廣谷直也氏が語る。
「創業40年を迎え、業態の見直しをしました。初心に戻って、麺類と丼物を充実させて、同グループの『すき家』との差別化を図るためです。常連のお客様に人気のある親子丼や、カツ丼とのラインアップに合わせた牛丼を作ると、こうなりました」
※週刊ポスト2014年3月7日号