つらい花粉症シーズンを迎え、鼻がスッキリするミント味のガムや飴、紅茶などの飲料が手放せないという人も多いだろう。スッキリ爽やかな香りとスーッと体内に染みわたる適度な刺激が、気分まで晴らしてくれる。
ミントはシソ科に属する植物で、世界中で約300種類以上が栽培されている。
日本ではハッカ(薄荷)として親しまれ、江戸時代の生物学者、貝原益軒が学術書の中でハッカ栽培の風景を掲載していることから、少なくとも300年以上も前から日本人はハッカの香りや味に癒されてきたことになる。
だが、それだけ長い間人々の生活で身近な存在になってきたにもかかわらず、ミントに含まれる成分の効用について、あまり多くは知られていない。実はミントは現代病にも効く優れた薬用植物なのに、である。
『お腹と頭がすっきり! ミント健康法』などの著書がある医師で、松生クリニック(内科・胃腸科/東京都立川市)院長の松生恒夫氏がいう。
「最近、ストレスによって慢性的な腹痛や腹部の不快感を訴える患者さんが増えています。これは過敏性腸症候群という病名で、ドイツやイギリスなどでは以前から症状の軽い患者さんに代替医療としてミントオイルが有効であることが指摘されていました。イタリアではペパーミント(西洋薄荷)の含有錠剤で症状が改善することも報告されています」
松生氏によれば、ペパーミントの精油成分(メントール)が消化管に対する健胃作用をもたらし、嘔吐、下痢、便秘、腹部膨満感、口臭、乗り物酔いなどに有効だという。
それだけではない。頭痛の9割を占める「緊張型頭痛」も、ストレスが原因とされる現代病。そこにもペパーミントの効果は抜群。
「ペパーミントオイルを額に塗ると、鎮痛薬と同じ効果を発揮することが分かっています。メントールには頭部周囲の筋肉の緊張を和らげ、頭痛を緩和してくれるのです」(松生氏)
さらに、近年の研究ではミントガムを噛むと記憶力がよくなる効果まで出されているというから驚きだ。
「ストレスを緩和するミントの香りが『思い出すこと』をスムーズにし、脳で記憶を整理するといわれる海馬の保護につながることも分かっています」(松生氏)
こうしてみると、まさにストレス社会の万能薬ともいえるミント。来る3月10日は「ミントの日」。馴染み深いメントールのパワーを噛みしめながら、身も心もリフレッシュしたい。