自民党と創価学会の関係が大きく軋みはじめた。安倍晋三首相が国会で集団的自衛権の「行使容認」について、「政府の最高責任者は私だ。政府の答弁について私が責任を持って、その上で選挙で審判を受ける」と宣言し、連立与党・公明党の支持母体、創価学会が最も警戒する憲法解釈の変更に踏み出したからだ。自民党の保守派議員が発言の意図をこう読み解いて見せる。
「総理はあの発言で“オレに従うか、それとも連立を去るか”と公明党に踏み絵を迫った。官邸は4月までに『安保法制懇談会』に集団的自衛権行使を容認する答申を出させ、それを受けて憲法解釈の変更を閣議決定するという強い決意で臨んでいる。
だが、最大の障害は連立内に解釈変更に極めて慎重な公明党とその支持母体の創価学会を抱えていることだ。公明党の一部には、閣議決定の際に、太田昭宏・国交相に署名を拒否させて連立離脱し、法案にも反対すべきだという強硬論さえある。そうなってからでは遅い。いまのうちに公明にははっきりしてもらいたい」
首相の姿勢は、当然、「平和の党」を看板に憲法解釈変更反対の立場を取ってきた公明党や創価学会の強い反発を招いている。
長く自民党との選挙協力の一線に立ってきた創価学会古参会員の話が内部の空気を物語っている。
「軍国化の印象がある解釈改憲には学会組織の中で最大の発言力を持つ婦人部を中心にアレルギーが非常に強い。『世界の平和』は創価学会の根本目標であり、学会の三色旗の青は平和のシンボルです。
自民党と公明党が連立を組んでいるからといって、安倍さんのやろうとしていることはその根本に関わる、われわれ学会員には譲れない一線なんです。公明党の山口那津男・代表も、昨年の参院選で『絶対反対』と言い切っていた。いまさら公明党が見直しに賛成したら多くの学会員は納得しません」
その山口代表は、集団的自衛権の行使容認について「今国会で結論を出すことは簡単ではない」と懸命に先送りを図ろうとしているが、安倍首相はあくまで今国会で「YESか、NOか」を迫る構えだ。
※週刊ポスト2014年3月7日号