「スマートフォン(スマホ)=高級品」というイメージを抱いているのは、いまや日本人だけなのかもしれない。スペイン・バルセロナ市内で開催されている携帯電話の見本市「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」で発表されたのは、激安スマホの数々だ。
パソコンメーカーの台湾エイサーから発売予定のスマホは99ユーロ(約1万4000円)。Firefox OS(基本ソフト)を開発する米モジラ財団は、自前のOSを初搭載したスマホの試作品を公開したが、その参考価格はなんと25ドル(約2500円)だという。
3000円を切る超激安スマホが開発できたのはなぜか。モバイル評論家で青森公立大学経営経済学部准教授の木暮祐一氏が解説する。
「世界のスマホ市場の8割を占めるアンドロイドOS搭載の端末は、多機能化や高性能化が進んで製造コストがどんどん高くなっています。そこでモジラは敢えて必要最小限のスペックに抑えて、低価格な端末をつくりやすいOSとして世界に広めようとしているのです」
格安スマホのターゲットは、これまでスマホの所有どころかインターネット環境も整っていない新興国のユーザーである。木暮氏が続ける。
「すでに世界では10億台以上のスマホが出回っていますが、さらに広めようとするなら、東南アジアやインド、アフリカ、南米などパソコンも使われていないような地域の低所得者に向けた普及拡大が欠かせません。そこで1万円以下のスマホが主流になりつつあるのです」
低価格を武器に勢力を伸ばしているのは、華為技術(ファーウェイ)やレノボといった中国メーカーである。
中国ではキャリア(携帯電話会社)大手の中国移動通信集団がアップルのiPhoneを発売するなど高価格帯のスマホは売れているが、廉価版の「5C」でも日本円で7万円以上。中国の大卒初任給より高いことを考えると、格安スマホの需要が高いのも頷ける。
翻って日本はどうか。さすがにスマホが初任給よりも高いということはないが、最新モデルなら10万円に迫る端末代に加え、月々の電話代や通信費が家計を圧迫している人は多いはず。ならば、日本にも格安スマホの流れはくるのだろうか。
「日本はキャリア主導の販売戦略を取っているので、はじめは端末の価格を高めに設定しても、自社への乗り換えや割引サービスなどで最終的にはゼロ円で配るビジネスモデルが成立している。メーカーからの端末買い取り額をすべてキャリア側で負担してもユーザーの通信費で後からカバーできる仕組みになっている」(通信業界紙記者)
最新型のスマホも、発売直後に購入しなければ端末価格は安く手に入る――。こんな認識がユーザーの間にも広まっているからこそ、現時点ではわざわざ格安スマホに手を出す必要はないというわけだ。