中国の60歳以上の高齢者人口は昨年末現在で2億人を超え、全人口の15%を占めていることが分かった。1950年代のベビーブームに生まれた人々が現在、最初の高齢者人口増のピークを形成しているという。中国では社会福祉政策が貧弱で、とりわけ年金制度はほとんど整備されていないことから、中国政府の財政危機に拍車がかかりそうだ。
日本では高齢者の定義は65歳以上だが、国連は60歳以上と定めている。中国も国連に倣っているが、もう一つの要素は定年が60歳ということも大きな要素だ。
厚労省によると、日本の60歳以上の人口は昨年末現在で3995万人あまり(推定)と全人口の3割以上を占める。
中国では高齢者人口は年平均800万人ずつ増加しており、2050年には4億3000万人に達する見通し。その時には、中国では3人に1人が60歳以上の高齢者となる計算。
中国政府のシンクタンク、中国社会科学院によると、中国の60歳人口が全人口に占める割合が、日本のそれを上回るのは2030年で、全人口の35%となる。高齢化に伴って、懸念されるのが年金支出の増加による国庫の圧迫だ。
中国は年金制度が整備されておらず、昨年、60歳以上で年金が支給されているのは7981万6000人で、総額で1740億3000万元(約3兆円)。このうち、日本の生活保護に相当する貧困層の数は5380万人も占めているので、今後は貧困層を除く年金受給資格者が急増することが予想される。
中国の31省・自治区・直轄市のうち、年金制度を整備し終わったのは26だが、そのうち実際に年金を支給しているのは北京市や上海市など財政が豊かな沿海部を中心とする14しかないのが実態。他の17の省・自治区・直轄市は年金を支給していない。
現在、中国の年金積立総額はGDPの2%程度しかなく、日本の25%などと比べて大きく見劣りしている。中国の財政専門家からは「中国では今後、年金の支出増で国庫が破綻する可能性もあり、世界経済に与える影響は少なくない」との指摘も出ている。