吉野家の「牛すき鍋膳」、なか卯の「牛すき丼」、すき家の「牛すき鍋定食」──いま牛丼業界では、メニューに「牛丼依存」から脱しようとする動きが目立つ。業界が脱・牛丼を図った背景には、様々な事情がある。まずは、牛丼の「値下げ競争」が限界を迎えたことだ。
2000年以降、度重なる値下げ競争を繰り広げてきた牛丼業界。2009年12月には、『すき家』が「280円牛丼」を仕掛け、ついに1杯300円を切る。これに対して『松屋』も2012年1月、牛めしを280円にプライスダウン。遅れること1年3か月、2013年4月に『吉野家』も牛丼を280円に引き下げ、泥沼の消耗戦に突入していた。
こうした値下げは、当初はもちろん顧客の関心を引いた。しかし、その“反動”も大きい。客はすぐにその値段に慣れてしまい、目新しさを失ってしまう。
一方で店側は、一度下げてしまった値段は、なかなか上げることができない。そこへ昨今の食材価格高騰が追い討ちをかけ、結局、自分たちの首を絞めてしまう結果に繋がった。
直近の決算では各社とも赤字に転落。唯一、『松屋』を展開する「松屋フーズ」だけが増収だったが、主因は出店抑制のコスト削減によるものだった。
「ほとんどが牛丼店の赤字を、他業種で穴埋めしている状況です。例えば『なか卯』・『すき家』を展開するゼンショーホールディングス(HD)は、グループ内の回転寿司店『はま寿司』の業績と、ファミリーレストラン『ココス』、スーパー『マルヤ』の業績に助けられている。度々の値下げで疲弊してしまったことで、業界全体が限界にきているといえます」(全国紙経済部記者)
※週刊ポスト2014年3月7日号