焼肉専門店は全国に約1万6000店、市場規模は5200億円にのぼる(富士経済マーケティング調べ、2012年)。競争激化でカルビ一人前が200円台の激安店も珍しくない。そんな焼肉店経営の裏側に迫り、安い店でも肉を美味しく食べる「法則」を探った。
2000年代に入り、BSE問題の影響で焼肉業界の市場規模は縮小に向かったものの、近年はテーブルオーダーバイキング(食べ放題)業態が好調で再び上昇基調に転じている。
大手チェーン「牛角」(約600店舗)、「安楽亭」(約220店舗)、「七輪焼肉 安安」(101店舗)などがしのぎを削り、一人前が「ファミリーカルビ/390円」(牛角、安楽亭)、「安安カルビ/290円」といった値段設定になっている。
90~120分の食べ放題も2500~2980円という価格帯(値段はいずれも税抜き)。デフレ下で消費者の強い味方となってきた。牛の枝肉(皮を剥ぎ、頭や脚の先端、内臓などを除いた状態の肉)の卸売価格は公表されている。
昨年12月の東京市場での数字を見ると最高級とされるA5クラスの雌和牛で1kgあたり2632円の値がついた。関西の高級焼肉店店主が明かす。
「枝肉から骨など食用に適さない部分を取り除く処理をすると半分ぐらいの重さになりますから、高級和牛の卸売価格は1kgあたり実質5000円前後。部位ごとに値段が設定されていき焼肉店の仕入れではA5クラスのロースで100g1000円程度するものもある。
一方、激安店で使われる輸入牛の価格帯はまったく違います。大手チェーンは大量仕入れのスケールメリットもあるので、カルビやロースは高級和牛の10分の1以下の100g70~80円が仕入れ値。
一人前80gを5~6切れで出す店なら、肉1枚の原価は10円くらいと考えればいい。200円台で出しても原価率は3割に収まります」
■文/鵜飼克郎(ジャーナリスト)
※SAPIO2014年3月号