ロシアでのソチ五輪を訪れた2020年東京五輪組織委員会のメンバーに、海外メディアから突きつけられた問題のひとつが「高齢者だらけ」というものだった。みずから71歳でも現役で働き続ける大前研一氏は、人の能力は単に年齢の問題でないものの、高齢リーダーだらけの「老害シンドローム」こそが今の日本が直面する問題を象徴しているという。
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これまで、東京都知事選挙の候補者が高齢者ばかりになった現状を問題視してきたが、日本ではリーダーやトップの高齢化は、もはや日常茶飯事である。
たとえば、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の会長に就任した森喜朗元首相は76歳、経団連の米倉弘昌現会長も76歳で次期会長の東レ・榊原定征会長は70歳、日本郵政の社長になった元東芝会長の西室泰三氏は78歳、特定秘密保護法の情報保全諮問会議座長に就任した読売新聞グループ本社会長・主筆の渡辺恒雄氏はなんと87歳、わざわざ訪韓して慰安婦問題で講演した社民党の村山富市元首相はさらに上の89歳だ。
人の能力やリーダーシップは単に年齢の問題ではないし、71歳になっても現役で働いている私自身が言うのもおこがましいが(私は公職に就いたことがないのであえて言わせてもらうと)、老人トップや高齢リーダーだらけの“老害シンドローム”こそ、今の日本が直面している問題の象徴にほかならない。
高齢者の問題は、とにかく時間があってヒマなことである。とくに現役時代に仕事一筋で趣味もなかったような人がリタイアするとヒマを持て余してしまい、もう一度仕事をしたいという人が多い。昔のようにのんびり静かに晴耕雨読の生活に浸りたいという人は少数派になっている。
富裕層の投資にしても、エンジェルではなく“デビル”と呼んだほうがいいほど積極的だ。結局、今の日本人は、元気なうちはコマネズミのように動き回っていないと気が済まない国民性なのである。
その一方で、若者から中年の世代では「草食化」が拡大している。それゆえヒマで元気な年寄りが、頼まれたら二つ返事で引き受けて組織や委員会などのトップに就くケースが目立っているわけで、このパターンはこれからますます増えていくに違いない。
※週刊ポスト2014年3月7 日号