金メダルを目指して、休む間もなく走り続けた4年間だった。しかし、ソチ五輪フィギュアスケート女子シングルの浅田真央(23才)は、集大成の幕開けとなったショートプログラムで、すべてのジャンプに失敗。それでも不屈の精神でフリーに臨んだ。
最初のトリプルアクセルに成功すると、残るジャンプもすべて着氷し、計8回の3回転、エイトトリプルを見事に決めた。そしてメダルには届かなかったものの6位入賞。全世界の人々の心を震わせた。
ロシアのテレビ局では、浅田のフリーの振付をした恩師のタチアナ・タラソワ氏(67才)が解説をしていた。
「私のかわいい真央。がんばるのよ。がんばるのよ」
浅田がリンクへ飛び出す時、タラソワ氏はそんな言葉で彼女を送り出した。ラフマニノフの重厚な音楽が鳴り響き、冒頭で浅田が最初のトリプルアクセルを決めると、「ヤッ!」と大きな声を上げた。そして浅田がジャンプを決めるたびに「なんていい子なの」「うまくいっている」と何度もつぶやいた。すべての演技を終え天を仰ぎ涙する浅田を見て、タラソワ氏も大粒の涙をこぼした。
「ブラボー。ありがとう。本当にありがとう。よくここまで仕上げたわね。彼女は素晴らしいスケーターよ。彼女は自分に打ち勝ったの。おお、神よ。真央が泣いてる。私にもちょっとつらいわ」
この解説は今ツイッターを通じて世界中で話題になっている。あの4分間、浅田への思いは国籍関係なく、みんなタラソワ氏と同じだった。
浅田のSP後、ツイッター上には「#MaoFight」というハッシュタグが登場した。このハッシュタグのおかげで、著名スケーターから芸能人まで、浅田を応援する声が世界中で大きくなり、ニュースでも取り上げられるほどとなった。
実はこのハッシュタグを作ったのは日本人ではなく、ロシア出身でウズベキスタンの男子フィギュアスケーターのミーシャ・ジー(22才)。競技会では減点対象とされている歌入り曲を使用し続けていることで注目されている選手だ。今回のソチ五輪では彼の信念が通じたのか減点はなく、大喝采を浴びた。
「真央のスコアはとても残念だけど諦めないで。フリーをよりよくするためにもっと応援しよう」
浅田を尊敬していたミーシャのそんな思いが、あっという間に世界中に広がった。そして浅田がフリーを終えると、上段のとおり感動コメントが殺到した。
著名人だけではない。浅田の長きライバルだったキム・ヨナ(23才)の母国・韓国でも、浅田の演技中、ジャンプが決まるたびに声があがっていた。さらに反日感情が広がっている中国でも感動の涙があふれた。中国版ツイッターでは「#浅田真央」に17万件近いコメントがついたと報じられている。そして、以下のような感動コメントが寄せられたという。
「彼女はいい子だから、期待や圧力をすべて受け止めてしまう。かわいそうだ。でもよくやったと思う」
「キム・ヨナの今日のフリーはまとまっていて彼女に合っていたけど純粋な夢追い人ではない。これこそ私たちが真央を愛し尊敬している理由」
「他の選手は審判を征服し、Maoは観客を征服した!」
※女性セブン2014年3月13日号