定年後、家にいることが増えると、ついついテレビばかり見てしまいがち。博報堂DYメディアパートナーズの調査によれば、年代が上がるほどテレビを視聴する時間が長くなり、20代男性の1日108.4分が、60代男性では162.2分に。60代女性では実に211.3分にも及ぶ。だが、今年68歳になる評論家の呉智英氏は「テレビは見ない」といい、その理由をこう語る。
「ほとんどテレビを見ないが不便を感じたことはない。新聞を3紙読み、あとはラジオのNHK・FMで音楽を聞いています。ニュースに関しては新聞から十分に得られるし、速報性のものはラジオからも入る。ラジオならNHKの受信料もかからない」
さらに呉氏は、テレビばかり見ていることの弊害も指摘する。
「私の母は89歳ですが、一日中テレビを見ていたためか物忘れなどが激しくなった。亡くなった父はテレビも見るけれど、死ぬ直前まで雑誌も本も読んでいて、そのおかげなのか最後まで頭ははっきりしていました。もちろん体質もあるかもしれませんが、テレビは流れてくる音や映像を受動的に頭に流しこんでいるだけで、新聞や雑誌を読むのとは脳の動きが違うのを感じます」
テレビを長時間視聴することに関しては、東北大学加齢医学研究所が行なった子供の追跡調査で、「テレビを長時間見た子供のほうが脳の成長が遅い傾向がある」との結果が出ている。同様のことは高齢者にもあてはまりそうだ。
思い切ってテレビを捨ててしまうことで、新たな趣味が見つかり、老後の楽しみが増えるかもしれない。
※週刊ポスト2014年3月7日号