今年も巨人は圧倒的な戦力を有し、セ・リーグ優勝の最有力候補と目されている。原辰徳監督は9年目を迎え、体制は盤石だ。この強さは本物なのか。巨人が最も強かったあの時代、V9時代と比較するために当時のエースで川上巨人がもっとも高い勝率をあげた1966年に21勝を挙げたエースのジョーこと城之内邦雄氏に聞いた。すると城之内氏は「間違いなくV9時代のほうが今より強かった」と胸を張る。
「同じ条件で投げれば負ける気がしない。今は1週間に1回の登板だけど、昔は中3日で投げて、リリーフにも出るんだから。今の選手だと1年持ちませんよ。
それに、今の打者の穴は手に取るようにわかるな。最近の投手はヒジを痛めるというのでシュートを投げなくなっているでしょう。だから打者も対応できなくなってきている。僕はシュートが得意だったからね。今の打者じゃ打てないんじゃないかな」
また城之内氏は、投手ならではの視点で、原巨人とV9の「守備」の違いについても語った。
「まず捕手。もちろん阿部(慎之介)より森(昌彦)さんのほうが上だと思います。なぜなら、当時はサイン盗みが横行していたから、ピッチャーはサイン通りになんて投げないんです。それでも森さんは全部捕ってくれるから、安心して投げることができた。阿部じゃそうはいかないでしょう」
余談だが、阿部と森という、新旧巨人を代表する両捕手の差を指摘する声は多い。ある球界OBは、2人を興味深い表現で評していた。曰く、「人の嫌がることをして、本当のことをいわない」のが森、「良くも悪くも素直な性格」なのが阿部。日本シリーズなどの土壇場で、この両者のどちらが強いかは明らかだろう。再び城之内氏の弁に戻す。
「内野陣も、V9時代、天然芝のグラウンドではイレギュラーするのが当たり前だから、少しでも前で捕球しようとしていた。今みたいに人工芝で待って捕っているとゲッツーも取れない。守備面でもV9のほうが勝っているでしょう。
それに何より、バックにONのような絶対的な生え抜き選手がいるのは、投手にとって大きいんです。追い込まれた時にタイムがかかると、ONがマウンドに来てくれる。これほど心強いものはない」
ONに匹敵する選手が、現在の原巨人にいるかどうか、ということだ。
※週刊ポスト2014年3月7日号