東北各地の景色を描いた水彩画の前に立つと、どこかで見たような懐かしさを感じさせる。絵の片隅には、どの作品にも“Don’t Give Up Japan”の文字が記されている。
東京・青山で開催中のイラストレーター・井筒啓之氏の個展のタイトルは、「昼寝するお化け・landscape」。本誌で20年以上続く曽野綾子氏の隔週連載エッセイ「昼寝するお化け」の挿し絵のみの展覧会である。本誌掲載時はモノクロだが、原画はいずれも濃淡のコントラストが印象的なカラー作品だ。
連載愛読者にはお気づきの方もあるかもしれないが、3年前の東日本大震災からほどなくして、井筒氏は東北の風景を挿画の題材にした。岩手山、松島、猪苗代湖などの名所・名跡、NHK朝ドラ『あまちゃん』で描かれた三陸海岸の風景などを、2年半で約60点を描き上げた。井筒氏は語る。
「これらの絵はインターネットを通じて海外でも紹介されています。震災で失われてしまった東北の美しい景色が戻るまで、このシリーズを続ける予定です」
個展は3月8日(土)まで「ギャラリーハウス マヤ」で開催中。住所は東京都港区北青山2-10-26。
撮影■木村圭司
※週刊ポスト2014年3月14日号