小保方晴子さんの「STAP細胞」発見で注目を集めている、日本で唯一の自然科学の総合研究所「理化学研究所」。埼玉・和光市の本拠地は東京ドーム約6個分の広さ。この広大な敷地に40近い研究棟や託児所、食堂、本屋、カフェまで揃え、国内外15か所の拠点では6000名もの研究者がそれぞれの研究テーマに取り組む。ここから科学技術立国を支える様々な発見・発明が生まれた。
その分野は、小保方さんの生物学だけでなく、物理学や工学、化学、医科学など多岐にわたる。戦後株式会社だった時期などを経て、独立行政法人となった現在も、これほど広い研究分野を持つ研究機関は世界に数少ない。
そのなかのひとつ、脳科学総合研究センター/適応知性研究チームでは、“映画の中に入り込む映像革命”を研究中だ。最先端の眼鏡型ウェアラブル端末とは方向性の異なる、極めてユニークな研究である。
たとえば、憧れのアイドルが目の前で自分のためだけに歌ってくれるとしたら……。そんな夢のような体験を生み出すのが藤井直敬リーダー率いる適応知性研究チームが開発した「SR(代替現実)システム」だ。
写真のように、通称「エイリアンヘッド」をかぶる被験者は、体験シーンが「目の前の現実」なのか「バーチャル」なのかがわからなくなるのだという。
12人のチームメンバーは20代後半から30代後半が中心。このシステムを考案した一人である脇坂崇平研究員(37)は、「現在の映像と、過去の記録映像を区別なく体験することで、現実と虚構の境目そのものがなくなる。今まで体験したことのないタイプのリアリティを持ったゲームも実現できるかもしれません」と語る。
撮影■二石友希
※週刊ポスト2014年3月14日号