慰安婦発言などで物議を醸した籾井勝人・NHK会長がNHKの理事10人に日付を空白にした辞表を提出させたことが明らかになった。彼はなぜ、こうも強気なのか。NHKの元幹部は語る。
「安倍官邸としては、肝煎りの人事だけに簡単に辞めてもらうわけにはいかない。籾井氏自身、安倍官邸の意を受けてNHKを『公平中立なメディアに体質改善』する役割を担っていると自任しているだけに、内部の抵抗には強気を通している。
籾井氏の最大の武器は、人事を握っていることです。4月に理事4人が任期切れを迎えるが、この2月に再任された専務理事らも含め、逆らえば任期に関係なくいつでも辞めさせられるぞ、と脅されている状態。さらに、春に予定される局全体の人事異動では、『見せしめ人事がある』との噂が局内を駆け巡り、局員はみな凍り付いています」
そうしたなか、籾井氏の片腕となっているのが、彼の推挙によりこの2月、副会長の座に就いた堂元光氏である。堂元氏は政治部出身で、海老沢勝二・元会長一派の流れを汲む人物。今回の辞表騒動の最中にありながら、「オレも辞表出しとこうかな~」と余裕を見せていたという。籾井氏と堂元氏のコンビは、官邸とのパイプを生かした「政治部支配」を強めている。
堂元氏を中心に、反籾井会長の動きは局内で徹底的に監視されており、これほどまでに外部からの批判が取り沙汰されても、籾井氏は独裁を止めようとしない。その強権ぶりと政治部支配の強化は、かつての海老沢体制を彷彿とさせる。
「海老沢元会長は、政権とパイプを築くことで国会の予算審議をコントロールし、局内で『エビジョンイル』といわれるほどの権勢を誇ったが、籾井氏の独裁はそれを思い起こさせる。すでに局内では、籾井氏を『モミジョンイル』、あるいは海老沢氏の後継ということで『モミジョンウン』などと揶揄する声が上がっています」(NHK職員)
※週刊ポスト2014年3月14日号