慰安婦発言などで物議を醸したNHKの籾井勝人会長が、NHKの理事10人に日付を空白にした辞表を提出させたことが国会で明らかになった。その独裁ぶりに局内では、籾井氏を「モミジョンイル」、あるいは「モミジョンウン」などと揶揄する声が上がっているという。
だが、そういったあだ名が冗談で済まされないほどに、NHKでは内部の締め付けがきつくなっている。問題は、それが報道機関の根幹というべき、番組内容にまで及んでいることだ。
「あの娘、大事なときには必ず転ぶんですよね」
ソチ五輪フィギュアスケートに出場した浅田真央選手の演技について、東京五輪組織委員会会長の森喜朗・元総理がこう発言すると、一挙に批判を浴び、テレビ各局は報道番組やワイドショーで大きくこの話題を取り上げた。ところが、NHKだけは沈黙していた。
「報道局の上層部が、森氏の発言を扱うのは『やめるべきだ』と判断したためです。安倍政権と籾井会長を慮ってのことですが、スポーツ局の人間は『もううちは終わったな』と話しています。社会部も都知事選の際に政権批判の報道を規制されて以来、鬱憤が溜まっており、ともに反旗を翻す一歩手前まで来ている。
結局、真央ちゃんが帰国後の記者会見で『森さんが後悔しているのでは』といったことだけは、さすがに報道しないわけにはいかないと現場が掛け合った結果、報じられることになった。ただし、それも森氏に関する部分が強調されないように、会見の最後に少し触れるぐらいでやるように、ということになった」(スポーツ局職員)
政権批判につながる報道が手控えられている例はそれだけではない。安倍晋三首相が解釈改憲について「最高責任者は私だ」と発言したことについて、2月13日の自民党総務会で、村上誠一郎・元行革担当相が「選挙に勝てば憲法解釈を自由に変えられるのか。危うい発言だ」と述べるなど、批判が相次いだ。
安倍政権に対して党内から公然と批判の声が上がったことに、テレビ各局や新聞各紙も飛びついて大きく報じたが、これもNHKは報じなかった。
「政権批判につながるような内容は、会長よりも下のレベルで弾かれるようになっている。こんなことは過去、あり得なかった」(NHK職員)
※週刊ポスト2014年3月14日号