就任早々失言問題などで物議を醸したNHKの籾井勝人会長がNHKの理事10人に日付を空白にした辞表を提出させたことが国会で明らかになった。人事をてこに内部の締め付けが厳しくなっているという。しかし、その恐怖政治を前に、NHKでは誰も声を上げる者が現われない。
「籾井氏があまりに飛ばし過ぎれば、彼が降ろされる可能性もゼロではない。しかし、仮にそうなったとしても、次のトップが官邸の意向を汲んだ人事になることに変わりはない。籾井降ろしで目立ちすぎれば、どのみちパージされることになる」(NHK職員)
そうして誰もこの異常な体制に異を唱えないまま、ゆるやかに報道機関としてのNHKが死を迎えようとしている。いまの状況を看過できないというのが、大貫康雄・元NHK欧州総局長である。
「ときの政権の思想が、公共放送の人事を左右するなど、民主主義国家ではあり得ないことです。北朝鮮や中国ならいざ知らず、ドイツなどの公共放送ならば、問題になって辞任は免れないでしょう。現場ではなかなか声が上げづらいのでしょうが、NHKのOBのなかでは、『何やってんだ』という声が高まっています。
NHKに米政府が怒っているというのも異常事態です。米国はこれまでNHKをプロパガンダのためにうまく利用してきましたから、キャロライン・ケネディ米駐日大使が『クローズアップ現代』の出演を拒否していたことは前代未聞です。いまNHKは、それほど危機的な状況にあるということです」
NHKには、「受信料の口座引き落としを停止するにはどうすればいいか」といった視聴者からの問い合わせが相次いでいるという。このままでは確実に不払い運動に発展すると、局内はパニック状態になっているが、その実情すらも、表沙汰にしようとしない。
※週刊ポスト2014年3月14日号