江沢民・元国家主席の長男、江綿恒氏が今年9月に開校する新設校、上海科学技術大学の学長に就任することが分かった。中国情報専門の米華字ニュースサイト「多維新聞網」が報じた。新設校だけに、学生募集や寄付などで、元最高指導者である江沢民氏の名前を最大限活用しようとの大学側の狙いが透けて見えるようだ。
江綿恒氏は1951年4月、上海生まれで、62歳。上海の名門大、復旦大学で物理を専攻し、政府系シンクタンク、中国科学院で修士課程を、米フィラデルフィアのドレクセル大学で博士課程を修了。電気工学の専門家として、中国科学院上海冶金所長を務めるなどして、1999年には中国科学院副院長に就任。2011年には60歳の定年で同院を退職したが、その後、中国科学院上海分院の院長に就いた。
しかし、江綿恒氏はこれまで研究活動一筋といったわけではなかった。副院長のかたわら、投資コンサルタント会社である上海聯和投資有限公司の代表を務め、上海自動車や上海飛行場集団、上海マイクロソフト、フェニックステレビなどの顧問として、コンサルタント業務をこなした。
いずれも一流企業で、香港最大の財閥企業・長江実業集団の総帥、李嘉誠会長と組んで北京の不動産開発をしたり、台湾企業と提携するなど、最高指導者だった江沢民氏の威光をバックに大規模なビジネス展開を行なっていた。
その江綿恒氏の名前が再びクローズアップされたのが2月19日で、上海科学技術大学の開学準備工作小組(グループ)組長の肩書きだった。
上海紙、東方早報(電子版)によると、江綿恒氏は「大学の使命は科学者や起業家らを育てることだ」と強調。今年秋から新入生を受け入れる予定で、「ノーベル賞受賞者を含む国際的に著名な学者を集めたい」と語っている。
江綿恒氏に学長としての実務能力があるかどうかは別にして、父親の江沢民氏が習近平国家主席ら現在の最高指導者に一言声をかければ、著名な学者を集めるのは可能だとみられる。このため、ネット上では「中国科学院副院長時代と同じく、江沢民氏の威光をバックにすれば、たんに座っているだけも職務は務まるのではないか」との書き込みがみられる。