死刑執行数が、自民党政権に移って1年余で8人とハイペースになっている。オウム真理教元幹部・平田信被告の裁判に同じく幹部だった死刑囚たちが証言を行うなどしたこともあり、死刑制度への関心が高まっているが、日本の死刑に関する基本的な事項をおさらいしておこう。
死刑が行なわれるのは刑務所ではない。高松を除く全国7か所の高裁所在地の拘置所内に刑場が設けられており、そこで死刑執行が行なわれる。高松には死刑台はなく、大阪拘置所で執行される。
死刑囚は、死そのものが刑であるため、執行までは拘置所に収容されており、懲役囚のような刑務作業はない。死刑が確定すると例外なく単独房に拘禁され、他の収容者との接触は許されない。冒頭に述べた平田信被告の裁判には3人の死刑囚が出廷したわけだが、それが異例だったことから大きな話題になった。
死刑執行は法務大臣が署名捺印した執行命令書によって行なわれる。拘置所長には約1か月前から死刑執行に関する内々の情報が入るが、一般刑務官には数日前、本人には当日直前まで知らされない。
執行に関わった経験を持つ西日本の元刑務官が重い口を開いてこういう。
「執行前に死刑囚の身長と体重を測り、同じ体重の砂袋を作って何回も実験します。踏み板からドンと落ちた瞬間に衝撃で首が30センチくらい伸びる。それを考慮して、ロープの長さなどをセッティングしておくわけです。先輩刑務官からは、首が締まって死ぬのではなく脊髄が一気に切れるから、痛みを感じずに死ねるんだと教えられました」
別の刑務官はこんな証言をする。
「首を吊ると失禁するといわれているが、私はそういうケースに当たったことがない。ただ、高齢でない男の場合、射精することは少なくない。やっぱり人間の本能なんだろう」
世界を見渡すと、絞首刑を採用する国は減っている。
「そもそも死刑自体を存続しているOECD加盟国は日本とアメリカだけです。しかも米国では3分の1の州で死刑を法律で廃止している。ヨーロッパを見ると、死刑廃止はEUの加盟条件でもある。2012年の日本の死刑執行数は世界ワースト10位という多さです」(アムネスティ・インターナショナル日本事務局長の若林秀樹氏)
アムネスティの資料によれば、絞首刑を採用しているのはアフガニスタン、バングラデシュ、ボツワナ、スーダンなど決して先進国とはいえない国ばかり。アメリカで死刑を存置している州でも絞首刑は廃止され、致死薬注射が一般的だ。
※週刊ポスト2014年3月14日号