中国の内情は混沌の度を高めている。中国の情勢に詳しいジャーナリスト・富坂聰氏が指摘する。
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社会が憎かった。だからやった――。
中国でいま無数に起きている無差別犯罪。その容疑者を捕まえてみると、多くの犯罪者が冒頭のような言葉を繰り返す。語られた犯行の動機は、いまや中国の凶悪事件の背景を理解する上で欠かせないキーワードにもなっている。
2月27日、貴州省貴陽市で突然バス炎上し6人が死亡、35人が負傷するという惨事が発生した。不自然な発火という点に加え負傷者らの目撃情報もあり間もなく放火事件と断定。地元警察は間もなく放火犯をとらえたと発表したのだった。
事件ではバスが燃えている瞬間が映像で流され、負傷者の生々しい姿も報じられたので全国的に大きな注目も集めた。
バス運転手の話では、当時、バスの中には40人ほどの乗客がいたという。これまでのケースでは犯人を含め乗客全員が死亡することも少なくなかったが、今回は6人の死者にとどまった。ただ、4カ月の乳児が事故に巻き込まれたことで社会に大きな衝撃が走った。
習近平政権下で進められる反腐敗キャンペーンの終着点として、超大物共産党幹部に対する追及が着々と進められているとされる。政権にとってもリスクのある汚職追放の裏側には、社会に広がる共産党支配に対する憎しみがすでに危険レベルに達しているとの認識があるからだと考えられている。