シリーズ累計出荷数600万本超、映画化やドラマ化もされた大ヒットゲーム『龍が如く』シリーズ。任侠の世界を描いた本作は、映画のようなドラマティックなストーリー展開だけでなく、渡哲也、哀川翔、中村獅童など著名な俳優が声優を務めることでも有名だ。
そんな大作をプロデュースしているのが、セガの取締役・名越稔洋さん(48才)。ソフトモヒカンの髪に日焼けした肌、革ジャンにゴツいリング…大企業の取締役らしからぬファッションは、『龍が如く』の世界からそのまま飛び出したような雰囲気だ。
「自分の気持ちを高揚させることで、人を楽しませる作品を作ることができると思っています。自分の場合、それはファッション。きちんと仕事をしていればどのような格好をしても問題ないと思っています。
この格好を始めたきっかけは10年ほど前。減量のためジムに通ったのですが、そこには体が引き締まって日焼けしたかっこいい男性が多く、あんなふうになりたいなと真似したのが始まりです」(名越さん・以下「」内同)
名越さんは、山口県下関市の生まれ。実家は海産物の問屋を営んでいた。
「父は典型的な“飲む・打つ・買う”の人で、家にいないことも多く、借金取りが頻繁に自宅に来るほどでした。友達は多かったけれど、小学生の頃から人や物に関して達観し、世の中を醒めた目で見ているところはありましたね。15才の高校進学時、母親にひとり暮らしをさせてくれないかと頼むと、借金取りがやってくるような家ではかわいそうだと思ったのか、許してくれました。
でも、遊ぶ金はないので不良にもなりきれず、もうこのままアウトローな世界に堕ちるか、別の道を切り開くかで悩みました。結局、親の世代からの負の人生を捨て、自分という人間が持ってるもので勝負したいと決心しました」
高校卒業後1年間働いて学費を貯め、東京造形大学へ進学する。やがて映画製作に憧れを抱き、映画会社への就職を目指すも、なかなか就職先が見つからない。
「日本映画が下火の時代で求人が少なくて…。当時発売されたばかりのファミコンでよく彼女と遊んでいたこともあり、ゲーム業界を受けて入ったのがこの会社です。
入社してゲーム制作の現場に配属になるのですが、苦労の連続。当時はパソコンもまだ高価な時代。自分はキーボードの使い方もわからない。また、当時のゲームは子供向けだったので、制約が多いのも窮屈に感じました。でも、途中で逃げるのは嫌いなので、早くヒット作を出して、ゲーム業界から脱してやろうと思ってましたね」
必死に努力していると、ゲーム制作の楽しさがわかってきた。がんばる姿を見て、かわいがってくれる上司も増えてきた。夢中になって、認められて…を繰り返すうちに25年以上が経ち、今はクリエーターとしてだけでなく、経営側として売り上げや損益などの数字に責任を持つ立場となった。
※女性セブン2014年3月20日号