「憲法改正」を掲げ、集団的自衛権の行使容認という“解釈改憲”に突き進む安倍晋三首相に、思わぬ人物が“待った”をかけている。
保守政治家の大御所にして大勲位、中曽根康弘・元首相(95)とナベツネこと渡辺恒雄・読売新聞グループ会長兼主筆(87)だ。いずれも安倍首相の「後見人」として憲法改正論議を支持してきた人物である。読売新聞のベテラン記者が語る。
「渡辺主筆は安倍首相が靖国神社を参拝して以来、幹部たちとの会合で、『あれにはオレも失望した』と漏らしている。もともと主筆はA級戦犯が合祀されている靖国参拝に大反対で、無宗教の国立戦没者追悼施設を建設すべきというのが持論だが、あのタイミングで参拝して米国との関係を悪化させた首相の政治判断にも失望が大きいようです」
“ナベツネの失望”は読売新聞の紙面にも反映された。
〈安倍首相の靖国神社参拝が、中国に日本批判の口実を与え、国際連携を弱めたのは否めない。従来は、防空識別圏の一方的な設定など、中国の独善的な振る舞いが国際社会で問題視されていたが、今後、日本にも情勢悪化の責任があるとの見方が広がりかねない。同盟国の米国の「失望」表明を軽視すべきではない〉(1月6日付社説)
靖国参拝だけではない。2人は1月4日に放映された日本テレビの『激論!なかそね荘』にそろって出演し、安倍首相が進める集団的自衛権の憲法解釈変更について、中曽根氏が「必要がなければ簡単に手をかける問題ではなく、いまの情勢では必要が出てくるとは思わない。注意深く慎重にやらないといけない」と再考を促して政界に大きな衝撃を与えた。
※週刊ポスト2014年3月21日号