「設備投資4.0%増」(読売)
「設備投資4.0%増」(毎日)
「設備投資額4%増」(朝日)
「設備投資4%増」(日経)
3月3日付の新聞各紙の夕刊には、一斉にこの言葉が躍った。読売の記事にはこうある。
〈財務省が3日発表した2013年10~12月期の法人企業統計によると、金融業・保険業を除く全産業の設備投資は、前年同期比4.0%増の9兆4393億円〉
他紙も同じような内容である。企業が設備投資を増やすということは、製造やサービスなどの設備を増強しているということで、それによってお金が回るため、景気の浮揚を意味する。新聞各紙が、こう報じれば、読者は「景気が上向いているんだな」と思い込むはずである。
しかし、この数字にはカラクリがある。第一生命経済研究所経済調査部の首席エコノミスト・熊野英生氏はこう指摘する。
「実は前年比ではなく前期比で見ると、設備投資は2四半期連続で減少しています。つまり、設備投資は昨年同時期と比べると増えているが、この半年間で見れば減ってきている。
ではなぜ昨年比だと伸びているかというと、比較対象となる12年には復興需要やエコカー補助金などの効果で4~6月期が大きく伸びていて、その後は下がっていた。前年より下がった2012年後半の数字と比べているから、上がっているだけ。これは前年比の“マジック”なのです」
実は日経記事(3月3日付夕刊)には、〈季節要因をならした設備投資(ソフトウエアを除く)は前期比0.3%減と、2四半期続けて前期を下回った〉と付け加えられている。この日、この事実に触れたのは日経だけで、その日経ですら、見出しに掲げたのは「設備投資4%増」という、一見、景気が良さそうな数字なのだ。
事実、伊藤忠経済研究所が発行する「エコノミック・モニター」(2014年3月3日)には〈2013年10~12月期も国内での設備投資は低迷が続いた〉と書かれている。大新聞とは真逆の評価だ。しかもこの時期は、消費増税前の先食いと、ウィンドウズXPのサポート切れによる社内パソコンのOS更新というプラス要因があって、この有り様なのである。
※週刊ポスト2014年3月21日号