NHK会長となった籾井勝人氏が理事(一般企業の取締役に当たる)全員に日付を空白にした辞表を提出させるなど、恫喝的な手法をとっていることが問題視されている。しかし、籾井氏による辞表提出要請騒動の裏には、まだ明かされていない内幕があった。NHK幹部はこう話す。
「2月中旬、籾井会長が浜田(健一郎)経営委員長に『理事を総入れ替えするつもりです』という腹案を伝えたのが事の発端だった。浜田氏は『ハレーションが大きい』と諫めたそうだが、籾井会長の意思は固かった。
いまの理事メンバーはJR東海副会長から転じた松本(正之)前会長体制下で選ばれている。籾井会長は、理事の構成が経済部出身者を重宝し、政治部出身者を冷遇しているとして強い不満を持っている」
理事10人のうち記者出身者は5人を占めるが、内訳は経済部出身3人、社会部出身1人、政治部出身1人。籾井氏は“偏りのある登用”を是正しようと考えていたのだ。
籾井氏が狙うのは、海老沢時代のようなNHKの「政治部支配」の復活。その動きを補佐しているのが会長の右腕として制作現場の“総監督”となる副会長の堂元光氏だ。堂元氏も政治部出身で、海老沢元会長に連なる“旧本流組”のひとり。現在の副会長ポストも籾井氏の推挙によるものだ。
しかし、この「理事総入れ替え」の腹案が伝わるや、理事らは猛反発。籾井氏が国会で「人事案件だから答えられない」と答弁したにもかかわらず、理事らが井氏からの辞表提出要請を認める「造反劇」を演じた裏側には、こんな経緯があったのだ。
「籾井氏の失言問題の時も、理事らは騒ぎを大きくしないよう静観していた。しかし、理事が総入れ替えされるという情報が漏れ伝わってきたので、態度を一変。理事にとってみれば、それは失職を意味する。大半の理事が“反井”に転じることになったのはそういう理由だ」(同前)
※週刊ポスト2014年3月21日号