東日本大震災からまもなく3年が経つが、昨年12月現在、いまだ27万人を超す被災者が避難生活を送っている(復興庁発表)。昨年10月時点では避難所生活者も67人いた。現在では避難所こそようやくゼロになったものの、仮設住宅住まいが10万人という現実は、世界第3位の経済大国、地震対策の先進国として恥ずべきものだ。
津波で流された瓦礫の処理は82%しか進んでおらず(昨年11月末)、2万戸あまりが計画された公営住宅の建設は着工がわずか61%(同)。高台などへの移転事業は造成工事に取り掛かったものが64%(同)、街を作り直すための土地区画整理事業は着手が65%(同)という惨憺たる状況である。なんと水道施設ですら被災した184事業のうち本格復旧していないものが11%も残る(同)。
ビジョン、リーダーシップ、責任感に欠けた政治・行政の無能ももちろん問題だが、それ以上に醜悪なのは復興を利権化し、被災地を金のなる木と見る権力者たちの汚れた企みである。復興が進まないのに復興予算だけは25兆円に達する。一体何に使われたのか。
政府・自民党と地元首長らが建設推進する防潮堤などは、税金の無駄であるうえ役にも立たず、街の機能も景観も絶望的に破壊する。何十億トンもの水が40メートルの高さに到達した今回のような津波を、たかが数メートルの人が造ったコンクリートの壁で抑えられると本気で考える者はいない。
それでも彼らが被災者の生活再建さえそっちのけで“バカの壁”建設に目の色を変えるのは、それが金と利権を生むからだ。そこには2万人の犠牲のうえに得た教訓を活かそうという良心や正義感はまるでない。いつかまた津波が押し寄せた時に、同じように多大な人命を失い、そしてまた“予測不能の未曾有の災害だった”で済ませていいはずがないではないか。もっとやるべきことがある。
私達日本人の、進み、克服する力が試されている。どんなに美談と麗句で飾っても、東北はまだ復興していないのだ。
※SAPIO2014年4月号