スギ花粉症は、スギ花粉によって起こるアレルギー疾患の総称だ。日本人の4人に1人が花粉症といわれ、2~4月はくしゃみや鼻水、鼻づまり、目のかゆみや倦怠感などを訴える人が急増する。主な治療は症状を緩和する対症療法で、花粉のシーズンが終わるまで患者はじっと耐えるというのが現状だ。
花粉症の根治療法として注目されるのが、アレルゲン免疫療法(減感作〈げんかんさ〉療法)だ。1911年に世界で初めてイネ科植物の花粉アレルギー患者に対して用いられたもので、アレルギーの原因である花粉のエキスを皮下注射し、徐々に濃度を上げていく。身体にアレルゲンを与え続けることで、花粉は無害なものだと身体に認識させ、過剰なアレルギー反応を起こさないようにする。
日本医科大学附属病院耳鼻咽喉科・頭頸(とうけい)部外科の大久保公裕部長に話を聞いた。
「皮下注射によるアレルゲン免疫療法は効果があったので、もっと手軽に飲み込む方法による研究が開始されました。しかし、食物アレルギーには効果があったものの、花粉アレルギーには効果がありませんでした。そこで花粉症に対する方法として研究されたのが、舌下(ぜつか)免疫療法です」
花粉は鼻から入り、鼻の奥のアデノイドにある免疫装置に付いて、くしゃみや鼻水などのアレルギー症状を起こす。花粉エキスを舌下に入れると、直接アデノイドに届き、そこから首のリンパ節に移動する。リンパ節のT細胞が毎日アレルゲンに接することで、身体にとって安全なものと認識してアレルギー反応を起こさなくなる。
この治療で使用されるスギ花粉エキスは、通常のアレルギー検査の2000倍もの高濃度のもの。これを1日1回舌下に滴下(てきか)し、2分間そのままの状態を保った後に飲み込む。その後5分間は、うがいや飲食を控える。治療開始は少量、低濃度で投与し、2週間かけて徐々に増量する。3週目以降は、同じ量と濃度を維持して最低2年間継続する。
スギの花粉症に対する舌下免疫療法は、今年春には保険承認される予定だ。花粉症シーズンを避けて、治療は6月以降にスタートし、最低2年間継続することがポイントだ。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2014年3月14日号