ファッションプロデューサーの植松晃士さんが、オバさんが美しく素敵に生きるための、オシャレのテクニックを教えてくれます。今回は、バブル期の定番アイテムだったシルクのスカーフの使い方です。
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先日、とても素敵なマダムを見かけました。場所は、とあるカフェ。多分、待ち合わせだったのでしょう。ひとり、背筋を伸ばしてコーヒーをいただく佇まいも凜として美しかったのですが、私が注目したのは、そのかたが傍らに置いていたバッグ。トートタイプの広い開口部にさり気なくシルクのスカーフが添えられていました。
トートバッグって、使い勝手はよいけれど、中身が全部見えてしまうでしょう。スカーフをふわっとかけておくのは、中身を隠すとても素敵なアイディアだと思います。
思い起こせば、シルクのスカーフは、バブル時代のお土産の定番でした。ご自分のために、免税店であれこれ迷った経験がある人も多いのではないかしら。殿方からプレゼントされるスカーフの数を、女の勲章にしていた若い女性も大勢おりました。
あの頃はスカーフ全盛期で誰もが三角に折って、背中に背負っていたものです。でも、あるときから流行が一段落してしまい、今はたんすの中にしまいっぱなし。
それでも捨てられないわよねえ。当たり前よ。シルクスカーフは、ある意味、女である証ですもの。スカーフを捨てない心意気を私はむしろ素敵だと思います。お花とか鳥とかトンボとかセミの柄は今見ても美術品並みに美しいもの。
だからこそ、トートバッグやカゴバッグのように、開口部が広いタイプのバッグに添えて、中身を隠すというアイディアは、とてもいいと思うのです。
ほら、今って洋服にプリントを多用しない時代でしょ。センスに“?”マークがつくかたは特に、不用意にプリントものに手を出すと下品になったり、老けてしまう危険性を秘めています。
でも、無地の服ならなおのこと、バッグにさり気なく柄もののスカーフをあしらうだけで、ぐっと華やかさが演出できます。
たった一枚でまるで『マイ・フェア・レディ』のイライザのような華やかさと可憐さが手に入るんですよ。つまりお手本はオードリー・ヘプバーンさんか、大地真央さんね。ま~どんなマドンナ? スカーフひとつで瞬時におモテファッションに変身。
そして、何より素敵なのは、ファッションの観点からだけでなく、実用的にも優れているということ。布で何かを包むのは日本ならではの細やかな心配りで、誇りにしたい習慣だと思います。バッグの中の、こまごまとした中身を隠す慎ましさが、日本人らしくて素晴らしい。
と、この話を知人にしたら、そのかたはカゴバッグの中身を全部スカーフで風呂敷風に包んで使っていたんですって。これも素敵!
でもね、シルクは繊細な素材だから、わずか1か月くらいで擦り切れてしまったそうです。だから、上からそっと包み隠す、くらいがいいかもしれません。
シルクのスカーフを、たんすの肥やしにしておくくらいなら、ぜひ、このアイディアを活用してみてはいかが? 若かりし日々の思い出の品も、浮かばれますよ。
春なら花柄、夏ならエスニックプリントと、季節感を表現するのにも最適です。しかも新しいものを買わずにオシャレに装えます。ぜひ、お試しあれ。オバさん、万歳!
※女性セブン2014年3月20日号