大手企業が続々と給料アップの方針を打ち出している。2014年春闘労使交渉は3月12日の集中回答日に最大のヤマ場を迎えるが、久しぶりにベースアップ(ベア)実施に踏み切る企業(以下)が多い。
トヨタ自動車(6年ぶり)2700円/NTT(7年ぶり)金額交渉中/日立製作所やパナソニックなど大手電機10社(6年ぶり)2000円/新日鉄住金(14年ぶり)2年間で合わせて2000円/イトーヨーカ堂(2年連続)2000円以上/ゼンショー(2年連続)3500円/ローソン(12年ぶり)3000円/ファミリーマート(2年ぶり)5000円【※組合側への最終回答前の企業も含まれる】
こうしてみると、ようやく景気回復が「賃上げ」という目に見える形で表れ出したと期待するサラリーマンも多いはず。だが、一口にベースアップといってもその配分の仕方は企業によってまちまちだ。
企業の人事・賃金コンサルティングを手掛ける賃金管理研究所の取締役主任研究員、大槻幸雄氏が解説する。
「ベースアップはその名の通り、毎年定められた時期に昇給を行う定期昇給(定昇)のベースがあったうえで、基本給を一律にかさ上げするのが一般的な方法です。しかし、近年は仕事の成果に応じて上げ幅に差をつけたり、賞与や一時金を含めたり、若者や子育て世代など“特定層”だけ賃金水準を引き上げるなんて企業もあります」
要するに、賃上げといっても社員すべての給料を押し並べて底上げすることは経営サイドも端から考えていないのだ。そして、基本給のアップに繋がらない“実質ベア”が「給与格差をますます広げる」と危惧するのは、人事ジャーナリストの溝上憲文氏である。
「管理職を中心に年功的な給与体系を廃止する企業が多い中、会社としては実績を上げた優秀な社員には今まで以上に報いたいという思いが強い反面、成果を出せないローパフォーマーにはランクに応じた査定昇給で減額するなんて企業まであります」(溝上氏)
毎年上がり続ける<年齢昇給>を廃止するかわりに<評価昇給>でベースを決め、企業業績がよければボーナスや各種手当てで一時的に報いる。確かにそのほうが人件費の増加が経営を圧迫するリスクも減らせる。
「ベアの復活が注目される今年の春闘ですが、そうはいっても定昇プラスベアの純粋なベースアップを実施する大手企業は2割以内にとどまるでしょう。月々のベースアップは据え置きで、賞与で反映する企業のほうが多いと思います」(前出・大槻氏)