8%への消費増税を前に、「4月以降も税込み価格据え置き」、さらには「4月から値下げする」と宣言する企業がある。安倍政権が「消費税還元セール禁止」を法制化し、“値上げファッショ”のムードが漂う中、あえて値下げを打ち出した企業の戦略とは──。
値札の数字は変わらずとも、量を増やす“実質値下げ”を発表したのがファミリーマート。すでに3月4日から約15種類のサンドイッチでパンの容量を5%増量。これに伴い、製造委託先とともに約10億円をかけて工場設備をリニューアルした。
「柔らかい食パンに変え、スライサーも新しい仕様にしたことで、量だけでなくおいしさをアップさせました。増税後もお得感をもって購入していただけるようにと考えています」(広報・IR部)
同社がサンドイッチを値下げ商品に選んだ背景にはこんな戦略があるという。
「各社ともに主力商品でありながら、“サンドイッチに強いコンビニ”というイメージは定まっていない。このリニューアルを機会に、“サンドイッチならファミマ”という評価をいただけるようにしたい」(同前)
同様に「増量して価格据え置き」を決めたのが、冷凍パスタや乾麺を1~2割増量した日清フーズだ。やはりこちらも「小売店や消費者の方々の消費意欲を喚起するきっかけにしたい」(日清製粉グループ本社広報部)という狙いがある。小売り大手のイオンはPB商品の約半数の価格を増税後も据え置く。
「消費者の方は、日々の生活に欠かせないものはなるべくお金をかけずにすませたいと考えています。そのため、値段が高くなったと感じさせないようにしなければならない。パッケージを変えたり、コストを下げるなど工夫することで価格を下げることは可能になります」(コーポレートコミュニケーション部)
丸井は約1割の価格を下げ、約3割の価格を据え置く。靴専門店のジーフットも一部のPB商品の値下げを決めた。
「卸や流通を通さないために商品の利幅が大きく、増税による3%分程度の値下げ(据え置き)には十分に耐えられる。また、値下げによって自社ブランド名の認知度が高まれば、十分な宣伝効果も期待できる。PBを持っている小売りは、こうしたインフレ局面に強いといえる」(経営ジャーナリスト)
※週刊ポスト2014年3月21日号