現在、葬儀費用約200万円、お墓代約280万円(東京都)といわれる高額な葬儀ビジネス。だが、火葬から遺骨の埋葬まで、「無料」で対処してもらえるのが医療機関の解剖実習などのために遺体を提供する「献体」である。
「各大学の医学部で組織される『白菊会』が献体の窓口です。本人が登録し、亡くなってから家族が連絡すれば遺体を大学側が引き取りに来てくれます」(ノンフィクションライター・大宮知信氏)
大学によって様々だが、解剖実習は概ね1年に1~2回。早くて半年、遅くても2年ほどでお骨は遺族の元に戻されるという。
「身寄りがなくお墓がない人は、大学の合祀墓に納骨してくれます」(同前)
ここ20年で登録者は倍増、現在は24万人を超える。最近では希望者が増えすぎ、登録を制限する都市部の大学もあるほどだ。
「父親の遺体を引き取りに来た大学スタッフが3万円の“寸志”を置いていったという経験を持つ友人もいる。香典代わりということでしょう」(同前)
遺された者の厄介になるどころか、献体は社会貢献になりうる。一つの選択肢としても考えてもいい時代かもしれない。
※週刊ポスト2014年3月21日号