スポーツ紙の苦境が続いている。発行部数はこの10年で半減しつつある(2000年は630万7000部の総発行部数が、昨年には387万3000部に ※日本新聞協会調べ)。かつてスポーツ紙各紙には“名物記者”がおり、それぞれ特徴のある特集コラムが掲載されていた。
激辛コラムで知られていた報知の『激ペン』白取晋記者をはじめ、スポニチの吉見健明記者、サンスポの平本渉記者などが代表格。特に巨人全盛の時代、巨人番でありながら、時に球団にとって痛いところを突く白取記者のコラムは、巨人ファン以外にも支持されていた。
ところが現在は差し障りのない情報、お涙頂戴の美談調の記事が大半を占めるようになり、紙面がのっぺりとしている。「わざわざ130円も出して買うのがバカらしい」(30代男性)というのももっともだ。なぜ読みごたえのある記事がなくなったのか。スポーツ紙OBの1人が語る。
「昔は体育会上がりのハチャメチャな人間が多かった。今でも体育会出身者は一定数はいるが、名のある大学の連中ばかりで、昔から比べれば品のいいお坊ちゃま。それに、運動経験のないような真性のお坊ちゃまも入ってくる。彼らはいい意味でも悪い意味でも真面目だから、原稿の質自体は上がったが、面白みはなくなってしまった」
プロ野球に強いスポーツジャーナリストもこう語る。
「今のスポーツ新聞の記者はとにかく、“嫌われたくない”という気持ちが強い。取材対象相手はもちろん、記者仲間からシカトされることを極度に嫌う。だから独自の動きをしようとしないし、常に集団行動をとり、情報の摺り合わせをして記事を補い合おうとする。仲間はずれにされるくらいなら特オチしたほうがマシという思いです」
事実、最近はこんなことがあったそうだ。某社に、近頃では珍しくしつこい記者がいて、ある監督の家に毎日張り付いていた。それを知っていた球団幹部は頑張りを認めて、翌日に監督がお忍びで出向く場所をこっそり教えてあげた。
独占インタビューの取れるチャンスである。しかしその記者は、その場に他社の記者まで引き連れてやってきた。これでは面白い独自の紙面など期待できない。
※週刊ポスト2014年3月21日号