青いジャケットと赤いジャケットの集団が客席に陣取り、壇上に現れた女性が緊張感漂う中ひと言「pepsi!」と告げると、歓声に沸く青いジャケットの人々――500人のブラインド調査で、61%が「ペプシ NEX ZERO」を支持したということを伝える、典型的な比較広告CMだ。
このCMを見た、広告代理店勤務のあるプランナーは「正直、驚きましたね」と語った。
「国内では、かなり昔にも『ペプシ』は、街頭インタビューの比較広告CMをやったことがあります。でも、最近はタレントの起用を中心にしたり、トクホなどの機能面を打ち出す――いわば一般的な手法を中心に展開していました。海外では過激な比較広告CMが話題になるブランドとはいえ、日本人は『人を呪わば穴二つ』とか『判官びいき』の文化もあって、ネガティブキャンペーン的なCMは風当たりがキツくなりがちです。
そういう背景から、日本のCMでは新製品の紹介で、他社製品との比較ではなく『当社比』という表現が多用されます。本来なら競合の製品と比較したいところだけれど、自粛しているケースが少なくないんじゃないですかね。その中で今回ペプシがストレートな比較広告を展開するのは、むしろ大きな勇気が必要だったと思います」
NAVERまとめ「ペプシvsコカ・コーラ!闘争心丸出しのCMが面白い!」では、これまで話題になった海外の「ペプシ」CMが集められており、両者の対決の歴史――というか「ペプシ」のケンカの売りっぷりが、いかに過激かが分かる。
「コカ・コーラ」を2本買った少年が、それを踏み台にして「ペプシ」を買い、「コカ・コーラ」の缶はそのまま置き去りにするとか、「コカ・コーラ」のロゴ入りキャップを被るなどした、関係者が「ペプシ」を買うとか、そのほか数々のCM展開を見ながら “ペプシのファイティングポーズ”を想像して、ニヤリとしてしまう人もいるだろう。これらのCMと比べてみると、ブラインド調査の結果を簡潔に伝える今回のCMは、むしろそのシンプルさ故に、ストレートなメッセージ性を感じさせる。
こうしたさまざまな背景や環境の中でも、「もろ刃の剣」ともいえる比較広告CMをあえて展開する必要があったのか――プランナーという立場からの、率直な意見を聞いてみた。
「今回の比較広告CMを制作した背景には、『ブラインド調査で61%の支持』というのを消費者へ、伝えたいという強い意志があったと感じます。奇しくもキャッチコピーは『Forever Challenge.』、テレビ番組やCMが自主規制しがちな今だからこそ、こういうチャレンジをしたこと自体を、個人的には支持したいですね」