中国広東省トップの胡春華・党政治局員は、2月9日夜に同省東莞市で、風俗関係者1000人以上を逮捕するという大規模な売春業者摘発作戦について、「中国中央テレビ局(CCTV)が9日午前に特集番組を放送したから、摘発を早めただけ。昨年から準備を進め、近く摘発作戦を実施する予定だった」と弁明した。
胡氏は習近平・国家主席の次の最高指導者の有力候補と目されている。しかし習氏は後継候補の胡氏を快く思っておらず、CCTVの売春報道で、胡氏が実態を知らずに、何の手も打っていないという無能ぶりを暴き、彼の評判を落として政治的責任を問う狙いがあったとの見方が出ていた。今回の胡氏の発言は「実態を知っていた」ことを強調したもの。
中国国営新華社電によると、胡氏は5日開幕した全国人民代表大会(全人代)でメディアの質問に答えて、「広東省は物質文明建設と精神文明建設の両方を成し遂げなければならない。特に、売春や麻薬の問題は座視してはならない」と述べた。
このうえで、胡氏は「東莞市内の2147か所を含む広東省内の3184か所の売春施設を摘発した。東莞市では副市長や公安局長ら幹部30人が、売春を放置した責任を問われている」と指摘した。
広東省では昨年末にも麻薬撲滅作戦を展開し、警官3000人が麻薬の密造・密売拠点を急襲し、覚醒剤など3トン以上を押収する大規模な一斉摘発作戦が実施されたばかり。この際も、「広東省は麻薬製造や密売を放置しているとの批判を気にした、胡氏が摘発を命令した」との観測が出ていた。
いずれにしても、習主席ら中央の最高幹部は胡氏の言動に注目している。とくに、習氏は2012年秋の党大会における最高人事をめぐって胡氏ら中国共産主義青年団(共青団)閥と鋭く対立し、熾烈な権力闘争を展開したとの情報もあるだけに、水面下で“胡氏いじめ”を繰り返していると伝えられている。