「デビューが決まってからは、夢のような1年で紅白にも出られたなんて、正直、実感がないんです」
流暢な日本語でそう言って微笑むクリス・ハートは、アメリカ・サンフランシスコ生まれの29才。親戚に日本人などひとりもいないアメリカ人だ。
外国人を集めた不定期放送の『のどじまんザ!ワールド』(日本テレビ系)での優勝がきっかけで注目され、昨年5月にカバー曲『home』でデビュー。そこからは、まさにとんとん拍子。
6月に発売したJ-POPのヒット曲のカバーアルバム『Heart Song』は30万枚を超える売り上げを記録。10月には、憧れの松田聖子(52才)とのデュエット曲『夢がさめて』を発売。デビュー1年目にして、第64回『NHK 紅白歌合戦』にも聖子とデュエットで出場を果たした。
「紅白では、聖子さんのカウントダウンライブの会場からの中継だったので、正直、助かりました。NHKホールでJ-POPの歌手、憧れの人たちに囲まれていたら、どうなっていたことか! アワアワして歌えなかったんじゃないかな(笑い)。今でもあの時、どういうふうに歌ったのか、よく覚えていないくらい緊張して…。とにかく、歌うことに必死でしたね」(クリス・以下同)
聖子と出会った日は忘れられない。
「昨年9月『夢がさめて』のレコーディングの時にお会いしたのが最初ですが、大スターなのに、部屋に入ってくるなり、ぼくに近づいてきて、“CDを聴いたわよ。素敵だったわ”と英語でカジュアルに話しかけてくださって…本当にうれしかった。
聖子さんは今年35周年を迎えられるのに、一緒に歌うのが、ド新人のぼくで大丈夫なのか!? 失礼してはいけないとか、緊張しすぎてうまく話せないでいたら、“私はいつまでも新人の気持ちでいたいの。その気持ちがあったほうがいいわよ。自分のベストの力でいつも歌に向かえたらと思って、私は歌っているのよ”と言ってくれました。
カチカチのぼくをほぐしてくれようと思ったのかもしれないのですが、聖子さんの言葉は忘れられません。あれだけの、すごいキャリアのあるスターなのに、いつまでも新人の気持ちを忘れない…なんて素晴らしい人だろうって。本当に尊敬しています」
レコーディング前のやりとりにも感銘を覚えた。彼に合わせるように、大先輩としてそっとリードしてくれる。その気遣いに感激したという。
「ところどころで“大丈夫?”と聞いてくれて、“おぉ、あの松田聖子さんがぼくの隣で一緒に合わせてくれているよ!”という感じで…この歌をいいものにしたいという気持ちが強く伝わってきて、感激しました。大スターだからこそ、周囲の人を大事にする。聖子さんからはたくさん勉強をさせてもらいました」
※女性セブン2014年3月20日号