中国共産党機関紙「人民日報」によると、中国では昨年の中国人海外留学生の帰国者が35万3500人となり過去最高を記録した。これは5年前の2008年の帰国者数の5倍以上だ。
ところが近年、国内の就職難から、海外留学帰国組も就職で苦戦しており、海藻や昆布が海の中で右往左往し、漂うさまと似ていることから、「海帯(昆布)族」と呼ばれるなど、かつての特権意識はいまや消え失せてしまっている。
中国では2008年の帰国組が6万9300人、2009年以降は10万8300人、13万4800人、18万6200人、27万2900人と年々急増。昨年はついに35万人を超えた。
これまで中国では改革・開放路線の進展に伴って海外留学組が倍々と急増。そのほとんどが、国費留学生でエリート中のエリートで、学業を終えると、そのまま海外の一流企業に就職したり、大学などで研究職に就くなど、帰国しない傾向が強かった。
帰国者よりも、そのまま海外に滞在し続ける人数の方が多かったほどだ。
このようななかで、帰国組は「海帰族」転じて、「海亀族」と呼ばれるようになった。“帰(gui)”と“亀(gui)”が同じ発音だからだ。海亀族は海外での先端知識に精通していることから、貴重な戦力としてもてはやされ、大手企業から引く手あまただった。
ところが、2008年のリーマン・ショック以降、国際的な景気後退で海外での雇用が伸びず、逆に中国の経済発展で、一部では中国内で就職した方が条件が良いとの逆転現象が起きてしまった。さらに、国内の大学数が増えたことから、大学生の数も急激に増えたこともあって、新卒の就職率は3割にも届かないなど、中国では未曾有の就職難となっている。
この煽りを食ったのが海亀族だ。今や、海外で学ぶのも、中国内で学ぶのもそれほど知識格差はなく、さらに国内でコネを使った方が就職には有利なことから、海亀族も厳しい就職戦争に巻き込まれるようになった。
海亀族は“海待族(就職できない海外帰国組)”になり果て、「海帯(昆布)族」と呼ばれるほどになってしまった。“待(dai)”と“帯(dai)”の発音が同じだからだ。海帯族は波に漂う昆布のように、厳しい就職戦線のなか、悪戦苦闘していると蔑称の意味合いが強い。