2004年に『卒婚のススメ』(オレンジページ)を出版し、「卒婚」という言葉を世に送り出した杉山由美子さん(62才)。杉山さん自身も事実婚を経て、別居婚という結婚生活を歩んでいる。
「大学を卒業して出版社に就職したんですが、夫とは入社と同時に一緒に暮らし始めました」(杉山さん・以下同)
33才のときに長女の出産を機に入籍。35才で次女を出産し、50代前半で娘2人と家を出て、別居婚をスタートさせた。
「同居をしていたときは、結婚生活というレールをふたりで走っているつもりだったんですけど、気づいたら走っているのは私だけ。今思えば夫は家庭のことでの決断をしない人で、先導役はいつも私。なのに子供の前では夫を立てて“パパに相談してみよう”なんて言ったり。そんなふうにかみ合っていない関係だったので、うまくいっていませんでしたね」
新たに3人が生活を始めたのは、それまでの家から徒歩15分の距離。当時、杉山さんとご主人は月に2、3回顔を合わせる程度。
「離れて暮らしてから言葉を選ぶようになりましたね。ある程度、互いを客観視できるようになった。一緒にいるときはテリトリーを守るのに必死で、ケンカをすると双方が譲らない。でも、距離を置くとそんなにがんばらなくてもよかったのにと冷静に考えられました」
杉山さんは“中年期の危機”を指摘する。
「中年にもなれば、たいていの夫婦が“どうせこの人は、こんなことを考えているんだろう”と妙に相手をわかったような気分になる。また、端から見ればそうでもないのに、“自分はこういう人間”と思い込む節もある。さらに“夫とは、妻とは、こうあるべき”という昔ながらの理想が前面に出て、自分や相手の適性を理解していない人も多い」
長い結婚生活のなか、そんなふうに頭が硬くなり、融通が利かなくなったとしたら、別居婚や家庭内別居で距離を置いたり、役割を変えてみるといい。すると相手に対して、目からうろこの気づきがあるという。
「ある時、夫から“君のおかげで家事もできるようになり、自立できたよ”と言われました。嫌みとかじゃなく、自然な言葉でした」
また、“夫婦”“家族”という枠にとらわれる必要もない。
「うちはふたりとも映画が好きで、私はB級、彼は難解な作品が好み。昔は妥協点として流行っている映画を見て“中和”させていましたが、あるときから別々のジャンルを見るように。そんな小さな部分で自分の好きなものをあきらめたり我慢する必要はありません。
これからは些細なことでも、自分でひとつひとつ決断をする癖をつけていかないと、夫を“濡れ落ち葉”なんて非難できなくなりますよ。逆に女性のほうが“お父さん、お父さん”とまとわりついているパターンもあるんですから」
高齢化社会となり、夫婦生活が60~80年続く。この莫大な時間を充実して過ごすためにも、夫の自立は必要不可欠だ。
「中年期になったら話し合っても無駄。話し合いは若いとき限定です。人はいくら言葉で言っても変わりません。だから自分の行動を変える。
私もある時から、ひとりで外出したり旅行に行く姿をあえて夫に見せていたら、向こうから歩み寄ってきました。自分にも自信がつきましたし、違うステージの友人もできて、得るものは大きかったですよ」
今、杉山さんとご主人の家の距離は100m。さらに“近居”となり、関係は順調だという。
※女性セブン2014年3月27日号