自宅で死にたい──そう考える高齢者が多い。死ぬまでマイホームに住み続ける。もしそう決めたのならば、まずは我が家の大改造に着手しよう。
これまで多くの高齢者の住宅改修に携わってきた「高齢者住環境研究所」所長で、一級建築士の溝口千恵子氏がいう。
「どれだけ愛着があっても、その家が老後の数十年間に耐えられない構造であれば、住み続けるのは危険です。
耐震性と居住空間の診断をし、欠陥があれば、改修しなければなりません。これは体が元気で、資金があるうちに着手すべきです。快適な老後を過ごすためにも、不安材料は早めに取り除きましょう」
関東から東海、近畿の太平洋側にかけては、今後数十年で、ほぼ確実に巨大地震が起きるとされる。家の耐震性は気になるところだ。
専門家による診断には費用が発生する。木造家屋で12万~25万円、マンションなど鉄筋コンクリート造の建物なら、床面積1平方メートルあたり500~2000円程度だ。
特に、その家が1981年6月以前に建築されたかどうかが大きなポイント。「建築基準法」施行令の改正によって新しい耐震基準が施行されたタイミングで、それ以前に工事が始まった家は、耐震性に難がある可能性が高い。
診断結果によっては、壁や基礎の補強工事に着手することになる。東京都の場合、平均的な費用は木造住宅1棟当たり150万~200万円。鉄筋コンクリート造の建物は1平方メートルあたり1万5000~5万円が相場となる。
かなりの高額なので、補強範囲を小さくすることで節約する人もいるようだ。
「寝室とその周辺だけを耐震補強し、地震がきたら寝室に逃げ込むという人も多い。専門家の診断にかかる費用、工事費共に、補助金を出す自治体もあるので、そういった制度を活用するのも手です」(溝口氏)
※週刊ポスト2014年3月14日号