戦後長きにわたり日本を支えた「輸出立国」は過去のものとなった。敗戦の焼け跡から日本を蘇らせた成功モデルから、我々は何を学ぶべきなのか。技術大国・日本の黎明期である戦前から戦後に、日本の自動車産業の礎を築いた人びとの奮闘を描くドラマ『LEADERS リーダーズ』(TBS系にて3月22・23日放送)で主役を演じた俳優の佐藤浩市(53)は「彼らの情熱に触れることで、新たな時代を拓くために必要な覚悟を感じた」と語る。
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例えば、独裁的・独善的にチームを引っ張っても成立するような映画やドラマの現場と、中長期的に国や企業を率いる場合ではずいぶん違う。小泉純一郎元首相のように大きな声で明確な言葉をズバッと言うタイプは日本であまり見かけないだけに魅力を感じますが、声の大きさや人気だけがリーダーの条件ではないでしょうし。
時代ごと、組織ごとに求められるリーダー像がある中で、愛知佐一郎(トヨタ自動車創業者・豊田喜一郎がモデル)を演じて気づいたことは「状況には寡黙たれ。条件については戦え」という姿勢がリーダーには必要ではないかということ。
苦境に際して文句を言うのは誰でもできる。時代に翻弄されながらも、その時にできることを淡々と行なう一方で、会社の行く末を左右するような条件交渉の場面が来たら、主張すべきは声を大にして主張し、納得できるまでテコでも動かない佐一郎はそういう大胆かつ繊細な戦い方をする人で、だからこそ部下や仲間がついていく。
僕自身、今回ほど「主役とは何か」と考えた現場はなかった。主役である自分を、現場では何百という眼が見ている。その時にどうあるべきか。主役としてのあり方が求められていると強く感じました。それは劇中の役柄とシンクロしていたのかもしれない。国内だけでなく豊田佐吉が戦前進出した上海まで、実働52日に及ぶ過酷なロケを淡々とこなし、それでいて細部は徹底して詰めるとかね。
ただし、単に聖人君子で偉いと言われているだけのリーダーなど、僕は信用しません。実は歴史上の偉人にも興味がなくて、この歳とキャリアで信長も秀吉も家康もやっていない役者は僕くらいじゃないでしょうか。情熱的にリーダーシップを発揮した喜一郎の生涯にも、輝きだけでは語れない裏側がある。ドラマでは夫婦関係においてそうした場面が描かれています。それもリーダーの一面です。
※SAPIO2014年4月号