体の様々な部分の痛みは、思わぬ病気の発症とつながることがある。歯痛や肩の痛みから狭心症や心筋梗塞がわかることもあるからだ。だが難しいのは、その痛みを医者にどう伝えるかだろう。
神戸市立医療センター中央市民病院の坂井信幸・脳神経外科部長によれば、医者が患者から確認したいポイントは大別して以下の3点だという。
【1】どこが痛いのか
【2】痛みの起こり方
【3】痛みの強さと種類
「私たち医師が、重篤な病気に直結する痛みかどうかを診断するのはこの3点が基本となります。患者さんの表現にはそれぞれ違いがありますが、【1】部位、そして【2】痛みが突然起こったものか、周期的なものか、を踏まえた上で、【3】痛みの程度や種類を聞く。たとえば頭痛であれば、心臓の拍動に伴ってドクドクと痛むのか、ギューッと締め付けられるような痛みなのかと聞いていく」(坂井氏)
とはいえ、患者の立場からすれば、【1】と【2】はともかく【3】を表現するのは難しい。痛みの強さは患者の主観に大きく左右されるし、どんな言葉で痛みを表現していいかよくわからない。
そのため医療現場では「ペインスケール」という痛みの評価方法を多く用いている。たとえば10段階評価のものなら、痛みが全くない状態をゼロとし、一番痛いと思う痛みを10として、患者側に表現させる。また、がん患者の場合には、笑顔のイラストを「0」、苦痛に表情を歪めるイラストを「5」として、用意した0~5、計6つのイラストから痛みの度合いを示す「フェイススケール」を用いる場合もある。
こうした目安をもとに医師側は患者の痛みを推し量ったり、痛みを抑える薬をどの程度処方するかを決める材料にする。
痛みの表現についてはどうすればいいのか。名古屋大学医学部附属病院総合診療科の講師である鈴木富雄氏がいう。
「特に明確な決まりはないが、ジンジンとかビリビリという表現なら医師は神経を刺激する痛みと理解するでしょう。ドーンというような圧迫を思わせる痛みなら、内臓から来るものかと診察に役立てる。ズキズキという表現なら、関節や骨などの痛みと考えます」
痛みを他人に伝えるのは難しい。しかし、これら医師のアドバイスがあれば、できる限りの対策を練ることができるはずだ。
※週刊ポスト2014年3月28日号