日本では「赤ちゃんポスト」を題材にしたテレビドラマが物議を醸しているが、中国でも広東省広州市で今年1月下旬に赤ちゃんポストを開設したところ、2か月足らずで262人もの赤ちゃんがポストに入れられたため、ベッドなどの設備のほか、看護士も足らず、施設の機能がパンクして休業に追い込まれた。
しかも、乳児は知的障害やダウン症などの重い病気にかかっており、施設側では治療も負担となっている。この背景には中国政府による医療体制構築の不備など厚生行政の貧困さが見え隠れしている。中国国営新華社電が報じた。
中国で赤ちゃんポストが初めて設置されたのは河北省の省都・石家荘市で、3年あまり前の2011年6月。その後、10省25都市に新設されており、広州市の施設が最も新しい。
この施設では、赤ちゃんをポストに入れる際、呼び鈴を押して、施設内の係員に赤ちゃんの存在を知らせたあと、ほぼ10分後に係員がポストの赤ちゃんを“回収”することになっている。
しかし、広州市の施設では、あまりにも赤ちゃんの数が多く2か月足らずで262人というのは「中国内の他の施設に比べて、大変に多い数字だ」とこの赤ちゃんポストの責任者である広州市福祉センター長は語っている。
この原因について、中国政府が推進している一人っ子政策の影響と考えがちだが、そうでもないようだ。というのは、262人の男女の内訳は男児が148人で、女児は114人。中国では男児の赤ちゃんをほしがる傾向があるものの、この施設では男児の方が多いからだ。
センター長によれば「親が赤ちゃんポストに預ける理由は貧困だと思われがちだが、広州市の場合、比較的富裕層が多いので、それは当たらない。その理由は赤ちゃんが難病にかかっていることだ。医療保険が未発達の中国では、その治療費は膨大な額になる」という。
262人の大半は病気にかかっており、最も多いのが知的障害で119人、ダウン症が39人、心臓疾患が32人で、残りの72人の乳児も現代医学では治療が難しい病気にかかっているという。
赤ちゃんポストができる前は、このような病気の赤ちゃんの8割は病院で置き去りにされていたという。
新華社電は記事の最後で、「このような障害を抱えた赤ちゃんが、国の保護のもとで、しっかりと育てられる環境を整えていくことが重要だ」との広東省の福祉政策部門の責任者の言葉を紹介している。