今から25年前の1989年、年号は平成に変わり、バブル景気に沸き、株価は史上最高値を記録した。その年の4月1日、3%の税率で消費税が初めて導入された。そして今年、同じく4月1日に消費税は8%にアップされる。
奇しくも導入から四半世紀、日本も、世界も大きく変わり、経済状況も、生活環境も、明らかに様変わりした。しかし今の時代とつながるものも…。
東京と埼玉で4才から7才の幼女4人が犠牲になった連続幼女誘拐事件で、宮崎勤容疑者が逮捕された(死刑確定。2008年執行)。5500本以上のビデオテープがうずたかく積まれた宮崎容疑者の自室の映像は衝撃的だった。
宮崎事件で注目された「おたく」という言葉の名づけ親でもある作家・中森明夫さんが言う。
「宮崎事件はちょうど昭和から平成への転換期に起こり、酒鬼薔薇事件など後の事件の先駆けとなりました。この事件以降、ロリータ漫画や過激なゲームを規制する傾向が強くなりましたが、当の本人が何を考えていたのかは裁判でも明らかにならず、本質のわからない事件でした」
オウム真理教による坂本弁護士一家殺害事件が発生したのもこの年だった。
「当時はオウムの犯行ということが発覚せず、1995年の地下鉄サリン事件につながりました。バブル経済で物質的な欲求を満たす一方、それでは満足できず、精神的な充足を求める若者が増えた時代の象徴的な事件です」(中森さん)
事件が時代の病巣を映し出すものだとすれば、アイドルは時代が求めて、出てくるものかもしれない。
「1980年代を代表するアイドルである松田聖子さん(52才)は、結婚して子供が生まれても仕事をやめませんでした。真のアイドルは時代より早く登場し、時代がアイドルを追いかけるものだと思いますが、まさに今の女性のスタンダードになっている“働くママ”像を先取りしたのだと思います」(中森さん)
松田聖子に続いて、中森明菜(48才)や小泉今日子(48才)らが活躍。彼女たちと同世代の女性たちがバブル期を謳歌したと中森さんは言う。
「子供の頃にピンク・レディーを歌って踊っていた世代で、今でも踊れる人が多い(笑い)。まさに1989年を盛り上げた世代で今40~50代ですが、まだまだ元気で若い頃のメンタリティーを持ち続けていますね」(中森さん)
25年を経て、現在、AKB48やももいろクローバーZなど、人気アイドルが割拠し、再びアイドルブームといわれているが、その中身はまるで違うという。
「1980年代はソロ活動のアイドル全盛でしたが、今はグループばかり。ひとりで輝くのではなく、みんなで力を合わせる時代を反映しています。男女がひとつ屋根の下で共同生活する『テラスハウス』(フジテレビ系)もそうですが、何でもシェアする時代なんです」(中森さん)
さらにもうひとつ、世相面で奇妙な相関がある。1989年に話題となった栗良平さんの童話『一杯のかけそば』は、交通事故で父親を亡くした母子が大晦日にそば屋を訪れ、一杯のかけそばを3人でおいしそうにすするという物語で、日本中が涙した。それはまさにカネ、カネ、カネの世の中のアンチテーゼのように出てきたものだった。
しかし、実話とされた物語には、辻褄が合わない点が続出。さらに栗さんが寸借詐欺の常習犯だったと報じられ、ブームは一気に失墜していく。それはまるで、現代のベートーベンと呼ばれた佐村河内守氏(50才)にゴーストライターがいて、実際には耳も聞こえていたという騒動と重なり合うようだ。
※女性セブン2014年4月3日号